大河ドラマ『光る君へ』で“主役を食う”活躍をみせた女優は? ベストアクトレス5選。役に見事にハマった芸達者をセレクト
吉高由里子が主演を務める大河ドラマ『光る君へ』(NHK総合)がいよいよ最終回を迎える。平安時代の身分を超えた恋愛を描き、これまでの大河ドラマとは一線を画した内容で支持を集めた。今回は、主演の吉高由里子に負けじとも劣らない芝居を見せた女優を5人セレクトしてご紹介する。(文・西田梨紗)【あらすじ キャスト 解説 考察 評価 レビュー】
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【著者プロフィール:西田梨紗】
アメリカ文学を研究。文学研究をきっかけに、連ドラや大河ドラマの考察記事を執筆している。社会派ドラマの考察が得意。物心ついた頃から天海祐希さんと黒木瞳さんのファン。
立ち振る舞いに学ぶべきことが多かった
黒木華(源倫子)
黒木華は左大臣・雅信(益岡徹)と穆子(石野真子)の娘であり、道長の正妻である倫子を演じた。倫子は凛々しく、気品があふれ、気配り上手で、まひろや他の姫たちにも優しさをそそぐ女性だ。
倫子の立ち振る舞いに視聴者が学ぶべきことは多い。例えば、第3回「謎の男」における偏継(へんつぎ)のシーンではさりげない気配りで場を和ませた。
無双状態のまひろ(吉高由里子)がすべての札を取ってしまい、その場にいた姫たちの間に重苦しいムードが漂う中、倫子は「まひろさんは漢字がお得意なのね。1枚も取れなかった。うふふふ」とおだやかに笑い声を上げて場を和ませ、姫たちの表情を明るくさせた。SNSでは、倫子の心配りに賞賛の声が上がっていた。
上記のシーンを含む土御門殿で催されるサロンのシーンは多くの視聴者が“女子会”と称して楽しんでいたシーンであるが、それは姫たちの中心にいた倫子こと、黒木の演技力の賜物でもあろう。黒木は複数の姫たちを統括する倫子のカリスマ性を嫌味なく表現すると同時に、ほんわかとした雰囲気を醸し出すことで、姫たちが集うサロンのシーンを美しく華やかで、雅やかなものにしてみせた。
倫子の最大の見せ場として、第12回「思いの果て」における倫子が父・雅信と母・穆子に道長(柄本佑)への恋心を告げるシーンを挙げたい。
倫子は道長との結婚を渋る父に「私は藤原道長様をお慕いしております」と伝え、道長を婿にしたいと涙ながらに訴えた。黒木は倫子が抱く道長への愛情を力強くも、切ない演技で表現していた。父を見る倫子のまなざしには道長の后になるという強い意志が読み取れた。倫子の心に寄り添った黒木の芝居に涙腺を刺激された視聴者は多いはずだ。
この放送回には、土御門殿を訪れた道長と倫子が抱き合うシーンもある。愛する道長に抱きしめられ、安心した倫子の表情からは、道長に対する彼女の深い愛情がそこはかとなく読み取れた。
倫子は道長を一途に愛し、複数の子どもを産み育て、彼の出世に貢献したものの、道長の最大の愛しき人にはなれなかった。黒木はなごやかでしおらしい雰囲気を醸しつつ、道長に振り向いてもらえない心の寂しさもただよわせながら倫子を演じ、女優としての高い実力を改めて世間に知らしめた。