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家族で見るのは気まずい…。巨匠・伊丹十三の代表作

『マルサの女』(1987)

宮本信子
宮本信子【Getty Images】

監督:伊丹十三
脚本:伊丹十三
キャスト:宮本信子、山﨑努、津川雅彦、橋爪功、大地康雄、佐藤B作、室田日出男、桜金造、マッハ文朱、志水季里子、杉山とく子、伊東四朗、大滝秀治、芦田伸介、小林桂樹、小沢栄太郎、岡田茉莉子

【作品内容】

 やり手の税務署調査官・板倉亮子(宮本信子)はある日、捜査対象として、あるラブホテルに目をつける。しかしオーナーの権藤(山﨑努)はなかなか馬脚を現さない。

 そんな中、亮子は国税局査察部(マルサ)に抜擢される。以降、さまざまな現場を経験し、摘発のプロに成長した板倉は、上司の花村(津川雅彦)とともに再び権藤に挑むが…。

【注目ポイント】

 1971年から2003年まで、30年以上の長きにわたりお茶の間に夢を与え続けてきたフジテレビ系列の映画番組枠『ゴールデン洋画劇場』。大人たちの中には、この枠ではじめて『ホーム・アローン』(1990)や『ターミネーター』(1984)を見た、という方も多いことだろう。

 しかし、本枠には、年に一度、お茶の間がピリつく放送回があったはずだ。日本を代表する巨匠、伊丹十三監督作品の放送回だ。

 商業デザイナーとしてキャリアをスタートさせた伊丹は、その後俳優として活躍。『家族ゲーム』(1983)など、数々の作品で名演を見せる。そして、1984年からは映画監督に転向。お葬式にまつわる悲喜こもごもを描いた処女作『お葬式』(1984)は30以上の章を受賞するなど、大きな話題を呼んだ。

 では、なぜ伊丹監督作品は、お茶の間をピりつかせるのか。その理由は、伊丹がフィルモグラフィを通して「性」と向き合ってきた、という点にある。例えば、先に挙げた『お葬式』では、中盤で主人公と不倫相手との野外での性交シーンが登場。解放的でどこかコミカルな描写で、「死」を扱う本作にコントラストを与えている。

 そして、自身の妻である宮本信子を主人公に据えた『マルサの女』では、描写がさらにエスカレート。ナースが認知症の老人に自身の乳房を吸わせる、という過激な描写で、オープニングから観客の度肝を抜いた。

 過激な描写はまだ終わらない。例えば、板倉と花村の初仕事のシーンでは、貸金庫の鍵を服に隠したことを疑われた調査対象者の愛人が全裸でM字開脚になり、「女はここに隠すの!」と下半身を指さす。また、権藤と愛人の濡れ場では、事を終えた権藤が、愛人の股間にティッシュをはさむ。どのシーンも、欲と業にまみれた実に生々しくグロテスクな描写ばかりだ。

 さて、伊丹は、1997年に『マルタイの女』を発表後、自宅マンションから謎の投身自殺を遂げる。もし、この令和の世に伊丹が生きていたら、どんな作品を作っただろうか。

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