一糸まとわぬ女バンパイアに驚愕…!
SFホラー史に残る伝説の怪作
『スペースバンパイア』(1985)
監督:トビー・フーパー
脚色:ダン・オバノン、ドン・ジャコビー
原作:コリン・ウィルソン
キャスト:スティーブ・レイルズバック、ピーター・ファース、フランク・フィンレイ、マチルダ・メイ、パトリック・スチュワート、マイケル・ゴザード、ニコラス・ボール、オーブリー・モリス、クリストファー・ジャガー、ビル・マーリン
【作品内容】
76年周期で地球に接近するハレー彗星の任務を任されたイギリスのスペースシャトル「チャーチル号」は、彗星近くで謎の宇宙船を発見。船内に、全裸のまま眠るヒト型の生物3体を回収し、持ち帰るが、調査員が相次いで謎の死を遂げる。
1か月後。チャーチル号の安否を確認するため、アメリカのスペースシャトル「コロンビア号」が出発。火災を起こした「チャーチル号」を発見し、無傷だったヒト型生物3体を持ち帰るが…。
【注目ポイント】
本作は、『悪魔のいけにえ』(1974)で一躍ホラー映画界の寵児となったトビー・フーパー監督作品。原作はコリン・ウィルソンの小説『宇宙ヴァンパイアー』で、主演をスティーヴ・レイルズバックが務める。
脚本に『エイリアン』(1979)のダン・オバノン、音楽にアカデミー賞に3度輝いたヘンリー・マッシーニと、SF映画界を代表するスタッフ陣の起用が話題を呼んだ本作。しかし、実のところ本作の評判はそこまで高くはない。その理由は、マチルダ・メイ演じる「一糸まつろわぬ姿の」女バンパイアにある。
しかもこのバンパイア、血ではなく、人間の「精気」を糧に生きる。つまり、自身の体に欲情した男性の性欲を利用するのだ。これほどにエロティックな設定は、SF映画では類を見ないだろう。
なお、本作は、『日曜洋画劇場』でこれまで5回放送されているが、解説を担当した淀川長治も、本作に関してはバンパイアの説明に終始。内容よりもマチルダの裸体を賛美している(この解説も、令和の世の中では放送禁止だろう)。
とはいえ本作、映画としてのクオリティは決して低いわけではない。特に、精気を吸われゾンビ様になった男たちのビジュアルは生々しく、今見てもしっかり恐ろしい。
そして、何より忘れてはならないのは、当時若干19歳のマチルダだろう。バレエダンサー出身のマチルダは、本作が3作目の出演。その後、1987年に『ふくろうの叫び』でセザール賞の新人賞を受賞し、一躍人気女優の仲間入りを果たした。
実は、マチルダの出演時間は7分で、全体の出演時間の10分の1にも満たない。にも関わらずマチルダが最終的に全てを「持って行った」のは、やはり彼女のオーラと演技力の賜物だろう。