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タランティーノが描いたシャロン・テート事件の新解釈

『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』(2019)

マーゴット・ロビー
マーゴット・ロビー【Getty Images】

監督:ジョー・バーリンジャー
脚本:マイケル・ワーウィー
原作:エリザベス・クレプファー
出演:レオナルド・ディカプリオ、ブラッド・ピット、マーゴット・ロビー、エミール・ハーシュ、マーガレット・クアリー、ティモシー・オリファントジュリア・バターズ、オースティン・バトラー、エル・ファニング、ブルース・ダーン、マイク・モー、ルーク・ペリー、ダミアン・ルイス、アル・パチーノ、カート・ラッセル、ゾーイ・ベル、マイケル・マドセン

【作品内容】

1969年、ロサンゼルス。映画プロデューサーのマーヴィン・シュワーズ(アル・パチーノ)は、落ち目の俳優リック・ダルトン(レオナルド・ディカプリオ)とバーで待ち合わせていた。かつては主演を張っていたにも関わらず、過去2年間は悪役の仕事しか回ってこないリックを心配したリックを心配したシュワーズは、彼にイタリア映画出演の話を持ち掛ける。

【注目ポイント】

 先にことわっておくが、本作には実在の人物が登場するが、語られている物語は純然たるフィクションである。そんな中、クライマックスで描かれる事件は“シャロン・テート殺人事件”(1969)を下敷きにしている。

 当時新進気鋭の映画監督として注目を浴びていたロマン・ポランスキーの妻で俳優のシャロン・テートがチャールズ・マンソン率いるカルト集団に襲撃された事件である。実際に手を下したのはマンソンの“ファミリー”と呼ばれる信者たちだったが、首謀者としてマンソンにも死刑判決が下った。この事件が当時のアメリカ社会に与えた影響は大きく、ヒッピーカルチャーが終焉へと向かうきっかけとして語られることも多い。

 映画の内容に焦点を移そう。主人公はレオナルド・ディカプリオ演じるハリウッドスターのダルトンと彼の専属スタントマンであるブラッド・ピット演じるクリフ。落ち目なダルトンとそれに付き合うクリフの目線で全盛期を過ぎた60年代末期のハリウッドをノスタルジックに描いている。もちろん、2人とも架空の人物である。が、そんな架空の人生が実在した人物の人生と交差していくサマがなんとも面白い。

 本作に登場する実在の人物の代表例が当時のハリウッドを象徴する存在として登場するポーランド出身の映画作家ロマン・ポランスキーと、マーゴット・ロビー演じるその妻シャロン・テートである。

 観客のほとんどはシャロン・テートが辿る末路を知っている。そのため、凶刃が彼女を襲う瞬間がいつ訪れるのか、緊張感をもって画面と向き合うことになるわけだ。しかし、悲劇は起こらない。クライマックスでは、“マンソン・ファミリー”がテートを襲撃するものの、クリフに返り討ちに遭う…というなんともスカッとする展開になっているのだ。

 爽快なエンディングは観客の心を晴らす一方、バッドエンドに終わった史実は変えようがないという真理を突きつける、といった側面があり、観終って複雑な気持ちになる作品でもある。

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