シリーズきっての異色作
『真夏の方程式』(2013)
監督:西谷弘
脚本:福田靖
キャスト:福山雅治、吉高由里子、北村一輝、杏、前田吟、風吹ジュン、白竜、塩見三省、山崎光、西田尚美、田中哲司
【作品情報】
ある夏の日。”手つかずの海”と呼ばれる玻璃ヶ浦に海底鉱物資源開発の説明会のために訪れることになった天才物理学者の湯川学(福山雅治)。「緑岩荘」という旅館に宿泊することになった彼は、夏休みを叔母のもとで暮らすことになったと少年・恭平(山崎光)と出会う。
旅館には、もう1人の客である元刑事の塚原正次(塩見三省)も宿泊していた。しかし、翌朝、塚原が変死体となって発見される。
【注目ポイント】
東野圭吾の推理小説「ガリレオ」シリーズ「真夏の方程式」を原作に、福山雅治主演のテレビドラマ『ガリレオ』(フジテレビ系、2007)の劇場版第2作として制作された本作は、天才物理学者・湯川学が元刑事の殺害事件に挑む作品だ。
物語の鍵となるのは、旅館「緑岩荘」を営む川畑一家が、共有しているある秘密だ。
ある夏の日、「緑岩荘」で元刑事の塚原の遺体が見つかる。彼は、15年前に起きた川畑伸子殺人事件を担当していた。殺人の容疑で仙波英俊(白竜)という男が逮捕されたものの、塚原は他に真犯人がいると睨み、警視庁を退職してもなお事件の真相を追っていたのだった。
まずこの15年前の事件だが、塚原の読み通り、英俊は犯人ではなく、娘の成美(杏)の犯行であった。英俊は娘の罪を被った形だ。母・川畑節子(風吹ジュン)と義父・川畑重治(前田吟)は、塚原に成美の過去を暴かれることを恐れ、塚原を殺害。15年前と現在、2つの殺人は「成美を守る」という目的を共有していたわけだ。
大切な人を守るために行われた2つの殺人…。悲劇的なのは、重治が、殺人のアリバイづくりに、何も知らない小学4年生の甥・恭平を利用するという点だ。少年は知らぬ間に殺人に加担させられていた…。
成実は15年前に自身が犯した罪を悔やんでいた。湯川は、そんな彼女に対し「いつか恭平が自身の罪に気づいたとき、真実を包み隠さず話すのがいい」と告げ、玻璃ヶ浦を去る。
湯川が見事に事件を解決したという点だけ見れば紛れもないハッピーエンドだが、容易には解決できない問題が残っている。爽快感とほろ苦さがないまぜになった、味わい深い名ラストであると言っていいだろう。