世界に“クロサワ”の名を轟かせた名作
『羅生門』(1950)
監督:黒澤明
脚本:黒澤明、橋本忍
キャスト:三船敏郎、京マチ子、森雅之、志村喬、千秋実、上田吉二郎、本間文子、加東大介
【作品概要】
平安時代、とある山中の藪の中で1人の侍の死体が発見される。その男は、旅をしていた侍夫婦の夫、金沢武弘(森雅之)であった。
事件は、藪の中で昼寝をしていた盗賊・多襄丸(三船敏郎)による犯行と見られる。偶然通りかかった侍夫婦の夫を縛り上げ、妻の真砂(京マチ子)を襲った上で殺したと言うのだ。
この事件を巡る裁判が行われ、生前の夫婦を見かけた者、死体の発見者、多襄丸、妻、夫・金沢武弘の霊媒師が証言するが、それぞれの言い分が異なっており…。
【注目ポイント】
芥川龍之介の短編小説『藪の中』を黒澤明が映画化した本作は、「第12回ヴェネチア国際映画祭」(1951)でグランプリを受賞し、世界に“クロサワ”の名を轟かせた作品だ。
降りしきる大雨の中、「何がなんだかさっぱりわかんねえ」とつぶやく杣売りと、神妙な表情を浮かべる旅法師(千秋実)が映し出される印象的なシーンから始まる。
ある侍の死を巡り、裁判所に呼び出された4人の証言と霊媒師の語る内容が食い違い、誰の言葉が真実なのかが謎を深めていく。
観るたびにわからないと感じるのは、それぞれの語る内容が自身の解釈に基づいたものであり、客観的な「真実」がどこにもないからだ。
宮川一夫のカメラが映し出す斬新かつ美しい映像美に、役者たちの生き生きとした演技が印象に残る本作は、映画史に残る本格ミステリーである。
本作に影響を受けた映画監督は数多く存在する。例えば『レザボア・ドッグス』(1992)のクエンティン・タランティーノ、『ブレード・ランナー』(1982)のリドリー・スコット『アモーレス・ペロス』(2000)のアレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥなど、本作から影響を受けたと公言する映画作家は枚挙にいとまがない。
(文・シモ)
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【了】