原作者自ら映画として物語を再構成
『シャイロックの子供たち』(2023)
監督:本木克英
脚本:ツバキミチオ
キャスト:阿部サダヲ、上戸彩、玉森裕太、柳葉敏郎、杉本哲太、佐藤隆太、渡辺いっけい、忍成修吾、近藤公園、木南晴夏、酒井若菜、西村直人、中井千聖、森口瑤子、前川泰之、安井順平、徳井優、斎藤汰鷹、吉見一豊、吉田久美、柄本明、橋爪功、佐々木蔵之介
【作品内容】
東京第一銀行・長原支店で起きた現金紛失事件。ベテラン銀行員の西木(阿部サダヲ)は、同じ支店に勤務する北川(上戸彩)、田端(玉森裕太)とともに、事件に隠された謎を探っていく…。
【注目ポイント】
リアリティのある人物描写と骨太なストーリー。何より作品がもつ”熱”に魅了され、多くのファンを獲得している池井戸潤作品と言えば、半沢直樹シリーズや花咲舞シリーズを代表とする「銀行ミステリー」を頭に思い浮かべる人も多いかもしれない。
しかし、今となっては2011年に刊行された「下町ロケット」が直木賞を受賞して、2014年に連続ドラマ化された「ルーズヴェルト・ゲーム」では弱小企業野球部の再起を描ききるなど、ひとつのジャンルに捉われずに熱を帯びた人間ドラマを生み出しつづけている。
そんな池井戸潤の作家人生の転換点となったのが、2008年に刊行された「シャイロックの子供たち」だ。2022年のドラマ化を経て2023年に映画化された本作は、著者である池井戸潤が自ら脚本を担当して、原作とは異なる角度から物語を俯瞰している。
小説では異なる10人の銀行員の視点から、舞台となる東京銀行長原支店で起こる不可解な出来事や行内に漂う不穏な空気を映し出しているが、映画ではストーリーの時系列に沿って、西木(阿部サダヲ)や北川(上戸彩)たちが事件の核心に迫っていく。
映画はミステリー要素を控えめにして、よりエンタメに振った作品となっている。そのため、個人的には原作を読んでから映画を観るほうが、登場人物たちが抱える背景や人間関係を整理して作品を楽しむことができるのでオススメだ。