ブライアン・シンガー監督が描く巧妙な伏線と大どんでん返し
『ユージュアル・サスぺクツ』(1996)
監督:ブライアン・シンガー
脚本:クリストファー・マッカリー
出演者:スティーヴン・ボールドウィン、ガブリエル・バーン、チャズ・パルミンテリ、ケヴィン・ポラック、ピート・ポスルスウェイト、ケヴィン・スペイシー、スージー・エイミス、ベニチオ・デル・トロ、ジャンカルロ・エスポジート
【作品内容】
カリフォルニアの埠頭に浮かぶ船が爆発し、27人が死亡する事件が発生。麻薬取引に使われたその船には、大量のコカインと現金9100万ドルがあったはずだが、全て消えてなくなっていた。
捜査官クイヤン(チャズ・パルミンテリ)は、5人の犯罪集団の中で唯一無傷で生き残ったロジャー(ケヴィン・スペイシー)を尋問し、事実を明らかにしていくのだが…。
【注目ポイント】
本作は、『X-メン』(2000~)シリーズや『ボヘミアン・ラプソディ』(2018年)のブライアン・シンガー監督が手掛けた作品だ。
物語の冒頭で提示される謎の人物カイザー・ソゼ。その正体は一体何者なのか? 観客はその問いを抱えたまま、事件が起きる6週間前の出来事に遡っていく。
本作の魅力の1つは、巧妙に配置された伏線。改めて鑑賞すると、至る所にヒントが隠されていることに気付くのだ。
例えば、ロジャーが捜査官クイヤンに語る次のセリフ。
「何も分かってないんだな警部さん。奴は俺の居所をお見通しだ」
「俺を殺ったら、アッという間に(ソゼは)姿を消してそれっきりだ」
犯罪者集団の5人が、麻薬取引の船を襲う当日、仲間の1人がロジャーに「ここにいろ。生き残ったら金を持って逃げろ」と告げる台詞も、その後の展開を暗示しているのだ。さらに、取引組織の人間が発する「やっぱりあいつがやって来た!」と、船にカイザーソゼが来たことを告げる台詞も重要な伏線として機能している。
これらの伏線は、物語全体を通して“カイザー・ソゼ”という名前に観客の注意を引きつけながら、ラストの大どんでん返しで幕を閉じる演出に結実する。冒頭から張り詰めた緊張感をみなぎらせながら、ラストは力の抜けた演出でストンと落とす…。曲芸のような神業に何度観ても唸るばかりである。
(文・シモ)
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【了】