認知症患者の「リアル」を忠実に再現
怪優アンソニー・ホプキンスの演技が光る秀作
『ファーザー』(2020)
上映時間:97分
製作国:イギリス
監督:フローリアン・ゼレール
脚本:フローリアン・ゼレール、クリストファー・ハンプトン
キャスト:オリヴィア・コールマン、アンソニー・ホプキンス、ルーファス・シーウェル、イモージェン・プーツ、マーク・ゲイティス、オリヴィア・ウィリアムズ
【作品内容】
ロンドンで独り暮らしを送る81歳のアンソニーは、認知症を患いつつあったが、娘のアンが手配する介護人を拒否していた。そんな中、アンから新しい恋人とパリで暮らすと告げられショックを受ける。
しかし、そんな中、アンと結婚して10年になるという見知らぬ男がアンソニーの自宅に突然現れたことで、彼の混乱はさらに深まっていくー。
【注目ポイント】
『羊たちの沈黙』のハンニバル・レクター博士役で世界に衝撃を与えた名優アンソニー・ホプキンス。本作は、彼を軸としたヒューマンドラマ。
もともとはフロリアン・ゼレールが演劇の戯曲として執筆されたもので、第93回アカデミー賞で主演男優賞と脚色賞を受賞した。
介護というと、通常は介護者の視点からドラマが語られるのが一般的だろう。しかし、本作の場合は介護者である認知症患者の視点から映像が語られており、クリストファー・ノーラン監督作品のように現実と幻想が交錯するミステリーのような構造になっている。
なお、アンソニーは本作で、自身の亡くなった父をモデルに役づくりを行ったという。最後には自分の存在すら認識できなくなっていくアンソニー。迷宮に囚われた老境の彼の迫真の演技にも注目したい。