金なし夢なし彼女なし…
童貞高校生たちが描く性春映画
『俺たちに明日はないッス』(2008)
R15+指定
監督:タナダユキ
原作:さそうあきら
脚本:向井康介
出演:柄本時生、遠藤雄弥、安藤サクラ
【作品内容】
高校3年生の童貞3人組・比留間(柄本時生)、峯(遠藤雄弥)、安藤(草野イニ)は、虚しい気持ちを抱えたまま徒然なる毎日を過ごしていた。
ある日、比留間は、担任教師の吉田(田口トモロヲ)とともにラブホテルから出てくる友野(三輪子)を目撃。苛立ちを爆発させた比留間は吉田を殴る。
一方、峯は、公園で生理による貧血で倒れていた同級生・ちづ(安藤サクラ)を救助。生理のこともセックスのことも何も知らないちづは、セックスが見たいと峯に急接近。峯も結局ちづを受け入れる。
【注目ポイント】
童貞を卒業したい―。このテーマは、今も昔も多くの男子学生の至上命題だろう。童貞か童貞ではないかという違いは、男子学生にとって天と地との差がある。とはいえ、童貞が捨てられれば相手は誰でもいいわけではなく、やはり心から好きな人と一緒に卒業できれば本望なのは当然だろう。
本作は、そんな男子高校生特有の鬱屈をテーマとした青春映画。原作は『トトの世界』で知られるさそうあきらの同名漫画で、監督は『百万円と苦虫女』(2008)や『赤い文化住宅の初子』(2007)のタナダユキが務める。
金なし夢なし彼女なし、あるのは持て余した性欲だけ―。本作に登場する男子高校生たちは、そんなどこにでもいる男子高校生たちだ。そんな彼らが、ひょんなきっかけから女性と関係を結び、徐々に情にほだされていく。
キャスト陣は、そんな思春期特有の繊細な心の機微を、青い演技で表現している。特に、柄本時生と安藤サクラの「二大二世俳優」の体当たり演技は、思わず観客の胸を熱くさせること請け合いだろう。
そして迎える卒業式。女性とヤることで頭がいっぱいだった比留間は、卒業証書片手に校門を後にしながら次のようにつぶやく。
「あぁ、明日から何しよう」
学生からの卒業を経て、ようやく大人の階段を上り出した比留間。本作は、若者たちの青春との決別を描いた青春映画だったのかもしれない。
(文・編集部)
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【了】