女性も虜にするほど美しい花魁
中谷美紀『JIN-仁-』(2009)
監督:平川雄一朗、山室大輔、川嶋龍太郎、那須田淳
脚本:森下佳子
原作:村上もとか
出演:大沢たかお、中谷美紀、綾瀬はるか、小出恵介、桐谷健太、中村敦夫、麻生祐未、小日向文世、内野聖陽
【作品内容】
2000年。脳外科医・南方仁(大沢たかお)は、男性の脳から奇形腫を摘出してから、頭痛に悩まされるようになる。そんな中、脱走しようとした患者を引き止めようとした仁は、階段から転げ落ちる。
仁が目を覚ますとそこは1862年の幕末だった。やがて、歴史を変えてしまうことを知りながらも、幕末の人々を現代医療で救っていく。
【注目ポイント】
TBS「日曜劇場」枠で、第1期と第2期が制作され、高視聴率を記録した歴史医療ドラマ『JIN-仁-』。優れた番組を表彰する「ギャラクシー賞」2009年12月度月間賞を受賞するなど、名作の誉れ高い一作だ。
そんな本作で中谷美紀は、主人公・仁の婚約者でありながらも彼が執刀した脳手術の影響で植物状態になった友永未来と、その先祖である花魁・野風の1人2役を見事に演じた。
主演・大沢たかおの実直な芝居、細部のセリフにまで気が配られたシナリオ、圧巻のロケーション…など本作の魅力は枚挙にいとまがないが、花魁に扮した中谷の圧倒的な美しさもまた、人気を支える重要な要素の1つだろう。
スッと伸びた背筋で着物を着こなし、男性のみならず女性をも虜にした中谷の花魁姿。ビジュアルの美しさにばかり注目がいきがちだが、目を伏せる身振りなど細部に宿る色気、遊女としての気高さを漂わせる“ありんす言葉”の響きも絶品だった。
野風は遊女であることにプライドを持った芯の強い女性だが、時折、堪えきれずに溢れる涙は人を黙らせるほどの力を秘めている。出産を控えた野風が麻酔なしで帝王切開を望むシーンでは、これまでの優雅な姿からは考えられないほど声を荒げて「腹を切っておくんなんし!」と叫び、仁は帝王切開を決意する。痛みに悶えながら子の誕生を望む姿は、涙なしでは見られない。
中谷美紀が演じた遊女は美しさと強さを兼ね備え、他とは一線を画した迫力がある。彼女の芝居に着目して、再見してみてはいかがだろうか。