原作ファンのみならず幅広い層に親しまれる名作
『岸辺露伴は動かない』(2020〜)
演出:渡辺一貴
脚本:小林靖子
出演:高橋一生、飯豊まりえ
【作品内容】
岸辺露伴(高橋一生)は、大ヒット漫画「ピンクダークの少年」を連載中の人気漫画家。作品に命を吹き込むべく“リアリティ”を追求し続ける彼は、日々さまざまな取材先へ出向いていた。
ある日、担当編集者の泉京香(飯豊まりえ)から、土地を所有した者が必ず成功すると噂される「富豪村」の話を聞く。怪しみながらも興味を持った露伴は、早速現地へと足を運ぶが、やがて山の神々にまつわる奇奇怪怪な現象へと巻き込まれていく。
【注目ポイント】
荒木飛呂彦原作「ジョジョの奇妙な冒険」シリーズから生まれたスピンオフ作品を実写化。「ジョジョ」といえば、異能を具現化した「スタンド」が真っ先に思い浮かぶ。だが、本作ではあえてその設定は使用せず、天から与えられた「ギフト」とすることで、ファンのみならず幅広い視聴者層に親しまれる作品となった。
露伴が持つ能力「ヘブンズ・ドアー」は、発動すると相手が“本”になる。各ページで生い立ちや記憶を読むことができ、命令を書き込めば相手を意のままに動かすことも可能。一口に“本”といっても、京香はファッション誌のようなデザイン、第3話に登場する不思議な子ども・真央(北平妃璃愛)は絵本、第8話で露伴にジャンケン勝負を挑む少年・賢(柊木陽太)は学習帳など、人によって個性が出るのが特徴だ。
基本的には、露伴の好奇心が超えてはならないデッドラインを超え、日常に潜む怪異に出会っていく展開が繰り返される。その題材は神や妖怪、“何か”としか言い表しようがない面妖なもの、さらには伝説の幻のアワビまで多岐にわたる。
イチオシのエピソードを1つ挙げるならば、子孫を残すことだけを目的とした妖怪を描いた第6話「六壁坂」を推したい。まるで都市伝説のように、どこかに実在していそうなうす気味悪い現実感を味わうことになるだろう。
どのエピソードにも不思議な余韻があり、その視聴後感はどこか『世にも奇妙な物語』(フジテレビ系)を彷彿とさせる。オカルト好きには、堪らない一作だ。