序盤は人為的な異常現象かと思いきや…。
日本神話×オカルトのミステリー
『全領域異常解決室』(2024)
演出:石川淳一、根本和政、松山博昭、都築淳一
脚本:黒岩勉
出演:藤原竜也、広瀬アリス、柿澤勇人、福本莉子、小宮璃央、成海璃子、迫田孝也、ユースケ・サンタマリア、小日向文世
【作品内容】
警視庁音楽隊カラーガードに所属する雨野小夢(広瀬アリス)は、「全領域異常解決室」通称“全欠(ゼンケツ)”への移動を命じられる。本部へ向かうと、中には室長代理・興玉雅(藤原竜也)が待っていた。
全欠は、世界最古と呼ばれる捜査機関で、最先端科学でも解明できない不可解な事件を扱う内閣官房直轄の特殊な部署だという。その頃、世間では遺体は見つからず、衣服と持ち物、大量の血液だけが現場に残る「神隠し事件」が起こっていた。
神の一柱“ヒルコ”による犯行声明が出され、人々はその存在を信じ、崇める者まで現れる。本当に神の仕業なのか? 小夢と興玉は謎の神・ヒルコを追う。
【注目ポイント】
最先端の科学すら太刀打ちできない異様な事件を解決する「全領域異常解決室」。こう聞くと架空の存在のように思えるが、実は未確認飛行物体を含む異常現象に対応する実在のアメリカ国防総省専門機関がモデルとなっている。
一方、日本でも昔は天災地変や吉凶を把握する組織があったとか。もしもそれらが“令和”の時代に存在したら…本作はそんな“if”をきっかけに誕生したドラマだ。
第4話までは「シャドーマン」「キツネツキ」「縊鬼(イツキ)」など超常現象や妖怪を取り上げるも、それらはすべて人為的な事件という結末で、オカルト好きは少し肩透かしを食らったかもしれない。しかし、第5話以降は未来視を可能とする「市寸島比売命(イチキシマヒメノミコト)」ら本物の神が登場。また、“全欠”のメンバーも全員神だと明らかになったことで、“日本神話”をモチーフにしたドラマであると判明していく。
異常事件を解決する組織から、神々の話へ。日本神話自体が日本人に馴染みやすいというのもあるが、その展開は鮮やかでわかりやすく、脚本を担当した黒岩勉の手腕に脱帽するばかり。もともとキャラクターがしっかりしている神々を、説得力をもって違和感なく人間に落とし込んだ、藤原竜也をはじめとする役者陣の演技も非常に魅力的だった。
傷の治癒や液体を操るなどの神々が持つ特殊能力、記憶の一部を消す呪文「事戸を渡す」など、もし観たのが子ども時代だったならばうっかり真似してしまいそうになるほど心くすぐられる要素も盛りだくさん。続編も期待される秀作だ。
(文・西本沙織)
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【了】