和歌山出会い系サイト強盗殺傷事件の悲しい顛末
『愛の病』(2013)
監督:吉田浩太
脚本:石川均
出演:瀬戸さおり、岡山天音、八木将康、山田真歩、佐々木心音、黒石高大、藤田朋子
【作品内容】
出会い系のサクラとして働くエミコ(瀬戸さおり)は自身に入れ込む真之助(岡山天音)を騙して大金を貢がせていた。
一方、解体作業員のアキラ(八木将康)に恋したエミコは障害を持つアキラの姉(山田真歩)を疎ましく思い、殺意を抱くようになる。
【注目ポイント】
2002年に発生した「和歌山出会い系サイト強盗殺傷事件」を題材にした本作。出会い系サイトで知り合った男を巧みに操り、金銭を貢がせながらやがて殺人を唆す女と、彼女への愛に囚われ盲目的に従う男の運命を描いた作品だ。
和歌山出会い系サイト強盗殺傷事件を説明しよう。2001年8月、シングルマザーの女は出会い系サイトでバツイチのA男と知り合い、翌月から交際を始める。しかし、A男の束縛に嫌気が差した女が別れを切り出したところ、彼が応じなかった為、女は嘘をついて金を騙し取るようになる。
その嘘というのが小鉄というヤクザになりすまして計100万円以上を搾取。A男は借金地獄に陥り、やがて窃盗に手を染める。女も手を貸していたため、この事件で2人は逮捕されるが、執行猶予付きの判決を受けて釈放される。
一方で、女はB男と出会い交際を始めるも、B男の病弱な姉が邪魔だと思うようになる。女はA男を利用し、小鉄と名乗らせてA男の姉に接近。騙して車に誘い込み姉を殺害するのだ。
遺体は高野山中で焼却し、骨を川に遺棄するが、奪えた金はわずか3万5千円。その金額に不満を持った女はA男に強盗殺人を指示するも、この計画は失敗に終わりA男と女は逮捕される。
逮捕後は、女の虚偽も明るみになりA男は全てを自供。この事件、2004年3月に2人の裁判が行われ、判決公判で両被告に無期懲役が言い渡された。A男は上告せず、そのまま判決が確定。一方、女は上告したが、2005年12月に最高裁で棄却され、無期懲役が確定している。
映画では、瀬戸さおりが冷酷で身勝手な女・エミコ役を体当たりで熱演。彼女の指示で罪を犯してしまう男・真之助を岡山天音が演じている。
エミコが小鉄というヤクザになりすまし、それに騙される真之助にややコミカルさを感じつつも、登場人物の心の闇や、歪んだ愛情表現、特に主人公エミコが他者を操り、破滅へと追い込んでいく姿に欲情の行く末を感じずにはいられない。
(文・阿部早苗)
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