なぜ私たちは「ファーストラブ」に惹かれるのか。日本人の恋愛観と心理を徹底考察。タイトルに隠された魅力とは?

text by 小林久乃

「ファーストラブ」と聞いて、あなたは何を思い浮かべるだろうか? “初恋”や“最初の愛”という普遍的なテーマは、ドラマや映画のタイトルとしてもたびたび登場し、多くの作品で視聴者の心を掴んできた。今回は、「ファーストラブ」というタイトルの名作を振り返りながら、その言葉に込められたメッセージを紐解いていく。(文・小林久乃)
【あらすじ キャスト 解説 考察 評価 レビュー】

——————————

【著者プロフィール:小林久乃】

出版社勤務後、独立。2019年「結婚してもしなくてもうるわしきかな人生」にて作家デビュー。最新刊は趣味であるドラマオタクの知識をフルに活かした「ベスト・オブ・平成ドラマ!」。現在はエッセイ、コラムの執筆、各メディア構成、編集、プロモーション業などを生業とする、正々堂々の独身。最新情報はこちら

複雑な人間関係を描いた『First Love』の妙

深田恭子
深田恭子【Getty Images】

 あなたは“ファーストラブ”という言葉を読んで、どんな意味をイメージするだろうか。そのまま訳すと“初めての恋”となるけれど、どうも意味はシーンによって変わってくるらしい。

 というのが最近、手元にあるドラマや映画の資料を整理していると、日本には“ファーストラブ”というタイトルの作品が目立つことに気づいた。約20年間のうちに3作というペースを鑑みてみると、高頻度で使われていることは間違いない。さらに内容を見直すと“ファーストラブ”にはそれぞれのメッセージが込められている。

 私の記憶の範囲で気づいたのはTBS系の連続ドラマ『First Love』(2002年)。これは女子高生の“初恋”とだった。高校教師の藤堂直(渡部篤郎)と、その教え子である江沢夏澄(深田恭子)の禁断の恋を描いた物語。このふたりが数年後に再会を果たすのだが、それは夏澄の姉の婚約者として、紹介されることになってしまう。

 あらすじだけ読むと人間関係が煩雑化したドロ沼系のドラマを想像するかもしれないが、それだけで終わらせなかったのは脚本家・大石静の力が光っていたことを思い出す。作品に花を添える主題歌は宇多田ヒカルの『SAKURAドロップス』。

 宇多田といえば1999年放送『魔女の条件』(TBS系)の主題歌『First Love』も担当。ドラマは高校教師の広瀬未知(松嶋菜々子)と、その生徒である黒澤光(滝沢秀明)の恋を描いた作品で、ドラマ『First Love』となにか繋がりを感じさせる。ただ残念なことに『魔女の条件』は動画配信サービスが一般化した現在でも、視聴することができない。あのドラマ、本当に面白かったんだけど。

1 2 3
error: Content is protected !!