記憶障害が描く“初恋”の儚さと希望

北川景子
北川景子【Getty Images】

 続くは2021年公開、映画『ファーストラヴ』。こちらは主人公が気づいた“愛情”だった。父親を殺害した容疑で逮捕された聖山環菜(芳根京子)について、事件を取材する公認心理師・真壁由紀(北川景子)と、弁護士の庵野迦葉(中村倫也)。二転三転する環菜の供述に振り回されながらも、由紀は心の底にしまっていた記憶に気づくというサスペンス。けして前述のドラマ『First Love』のように恋愛要素はない。

 原作は第159回直木賞を受賞した島本理生の小説で、私も購入して何度か読み返して、映画公開を楽しみにしていた。さすが堤幸彦監督が描く世界は、物語の緩急が完璧だったことを思い出す。

 そして同年、連続ドラマ『First Love 初恋』(Netflix)が配信された。これはタイトルで熟語として触れられているように“初めての恋”を表している。ここまで読んでいただいている皆様、多数の“ファーストラブ”登場に脳内が混乱していないでしょうか。

 ラストに紹介するのは純然たるラブストーリー。野口也英(満島ひかり/青年期:八木莉可子)と、並木晴道(佐藤健/青年期:木戸大聖)の恋を1990年代後半の北海道と現代を行き来しながら全9話が進む。本来なら若いうちに実るはずだった初恋なのに、運命はふたりを結ばせることはなく、いたずらに人生を絡ませていく。再会したふたりに奇跡が訪れるのか…? という、記憶障害も含む内容。私は没入しすぎて3回も見て泣いてしまった。その涙の理由の一端に、主題歌として再び流れることになった宇多田ヒカルの『First Love』の後押しは大きかった。

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