“ヒッチコック落ち”がハイライトになった朝ドラ『虎に翼』


岩田剛典公式Instagramより

 岩田剛典をめぐる主題のバリエーションは、2024年の俳優仕事の最重要作として特筆すべき連続テレビ小説『虎に翼』(NHK総合)出演によって統合され、変化、変奏された。自分の信念を貫いた孤高の判事・花岡悟役が現在の岩田剛典の演技スタイルを規定したといっても過言ではない。

 第3週から第9週までの出番中、常に忘れがたい表情の数々を浮かべていた岩田が、同作の最終回が放送された9月27日、自身のInstagramストーリー上に、ある場面の撮影現場風景をアップしている。それは後に法曹界への女性進出を促すことになる主人公・猪爪寅子(伊藤沙莉)が法律を学ぶ明律大学の学友たちと出掛けたハイキング場面(第4週第18回)での一コマだ。

 楽しいハイキング場面終盤、表向きは寅子たち女子部の存在を尊重しているかにみえて実は男性中心主義的な花岡に寅子が噛みつく。口論が激化するうちに寅子は花岡を何度か小突く。花岡の後ろは崖…。寅子にどんどん迫られ、足を滑らせた花岡は「あああああぁ」と絶叫しながらまっ逆さま。実際の撮影現場では崖の上にいる岩田を下からワイヤーで引っ張るアクション撮影だが、腕をあげてのけぞる身体が宙を泳ぐような不思議な画面として編集されている。

『朝イチ』(NHK総合、4月26日放送回)に出演した岩田は「マトリックス落ち」と形容していた。花岡役のハイライト場面にしてはあまりに奇妙なこの画面を見て、ぼくは、“ヒッチコック落ち”だなと思った。

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