唐突に打たれた絶望の終止符

『イージー★ライダー』(1969)

映画『イージーライダー』の1シーン。手前はデニス・ホッパー、奥はピーター・フォンダ
映画『イージーライダー』の1シーン。手前はデニス・ホッパー、奥はピーター・フォンダ【Getty Images】

監督:デニス・ホッパー
脚本:デニス・ホッパー、ピーター・フォンダ、テリー・サザーン
出演:ピーター・フォンダ、デニス・ホッパー、ジャック・ニコルソン

【作品内容】

 1960年代のアメリカ。マリファナの密輸で手に入れた大金をもとに、キャプテン・アメリカ(ピーター・フォンダ)とビリー(デニス・ホッパー)は、無計画なアメリカ横断の旅に出る。

 しかし、行く先々で、差別がはびこるアメリカ南部の過酷な現実に直面して…。

【注目ポイント】

 本作は、俳優のデニス・ホッパーが監督・脚本・主演を努めたアメリカン・ニューシネマの金字塔である。自由を求めてさまようキャプテン・アメリカとビリーのバイクの旅。立ち寄った気さくな農夫に昼食をごちそうになったり、ヒッチハイクで拾ったヒッピーのコミューンで気ままに過ごしたり…。

 しかし、2人の旅は、アメリカ南部へ向かうにつれて雲行きが怪しくなる。彼らの自由に、嫌悪感を示す人たちの偏見にさらされることになるからだ。

 立ち寄ったレストランで、現地の人間の冷笑が飛び交う。

「あいつを産んだお袋も、さぞ驚いただろうな」
「あの長髪の男。問題を起こさないうちに刑務所にブチ込むか」

 偏見は、言葉だけでなく暴力という形で現われる。謝肉祭の喧噪から夜を越え、さらなる自由を求めてバイクを走らせる彼らの旅。その旅は、唐突に終止符が打たれるのだ。

「その髪を切れ!」

 通りすがりの名もなき男の運転する車から発せられる乾いたライフル音に、ビリーは倒れる。そして、キャプテンアメリカも同様に…。

 彼らの”自由のようなもの”は、結実することなく儚くも打ち砕かれてしまうのである。

 劇中に流れるステッペンウルフの『ワイルドでいこう!』やザ・ジミ・ヘンドリックス・エクスペリエンスの『イフ・シックス・ワズ・ナイン』といったロック史に残る名曲ふんだんに使われている点も本作を名作たらしめる重要な要素だろう。

 弁護士役として、個性的な演技を見せる若きジャック・ニコルソンの個性的な演技も光る。本作は、数年前に再映画化の話も報じられている。続報を期待したい。

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