悲痛なラスト30分

『プライベート・ライアン』(1998)

『プライベート・ライアン』
マット・デイモン(右)、トム・ハンクス(左)(『プライベート・ライアン』撮影現場にて)【Getty Images】

監督:スティーヴン・スピルバーグ
脚本:ロバート・ロダット
出演:トム・ハンクス、マット・デイモン、トム・サイズモア、エドワード・バーンズ、バリー・ペッパー、アダム・ゴールドバーグ、ヴィン・ディーゼル、ジョヴァンニ・リビシ、ジェレミー・デイビス

【作品内容】

 1944年6月6日。ノルマンディー侵攻作戦の一環としてオマハビーチに上陸したアメリカ軍は、ドイツ軍と激戦を繰り広げるも多くの犠牲者を出す。

 そんな中、生き延びたミラー大尉(トム・ハンクス)。彼は、軍上層部からの指令である任務を任される。それは、ライアン家の4人息子の一人、ジェームズ・ライアン二等兵(マット・デイモン)を救出するというものである。

 ミラー大尉のもと7人の兵士たちが選ばれ、ライアン救出のために戦場へと向かうが…。

【注目ポイント】

 スティーヴン・スピルバーグ監督がメガホンを取った戦争ドラマである本作は、冒頭のオマハ・ビーチでの20分ほどにも及ぶ戦闘シーンが強烈な印象を残す。ドイツ軍との戦いにより、アメリカ兵の切断した手足、飛び出た腸、つぶれた顔などの目を背けたくなる惨状が、リアルに映し出されているからだ。

 しかし個人的には、ラスト30分あまりのドイツ軍との橋での攻防シーンの方が、強烈に感じる。

 映画の中で感情移入してきた兵士たちが、唐突に亡くなっていく様子をなす術もなく見つめるしかないからである。

 一方は銃撃されて死に、一方は戦車の砲撃で吹き飛ばされて死ぬ。あるいは、ドイツ兵にナイフで刺されて。しまいには、隊を率いてきたミラー大尉までもが、ドイツ兵の銃弾にあっさりと倒れてゆく…。

 第71回アカデミー賞の監督賞、撮影賞などの5部門を受賞し、あとに続く戦争映画にも大きな影響を与えた本作。

 この映画を観ると、現在も終わりの見えないウクライナとロシアの戦争や、各国のきな臭い戦争の足音に、私たちは無関心でいられなくなるはずだ。

「ムダにするな。しっかり生きろ」。

 ミラー大尉が、ライアンに託した言葉は、現代に生きる私たちにも大切な言葉として刻まれる。

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