拒絶されてもなお貫く母への愛
『母さんがどんなに僕を嫌いでも』(2018)
監督:御法川修
脚本:大谷洋介
原作:歌川たいじ「母さんがどんなに僕を嫌いでも」
出演:仲野太賀、吉田羊、森崎ウィン、白石隼也、秋月三佳、小山春朋、斉藤陽一郎、おかやまはじめ、木野花
【作品内容】
一流企業で働き、順風満帆な人生を送っているようにみえるタイジ(仲野太賀)。しかし彼は最愛の母・光子(吉田羊)からの虐待という辛い過去を抱えていた。
17歳で家を飛び出して以降、本心を隠して精一杯生きてきたタイジ。やがて大人になった彼は、気の置けない友人たちに背中を押されながら、かつて自分に手をあげた母親に立ち向かう決意をする。
【注目ポイント】
2026年の大河ドラマ『豊臣兄弟!』で主人公の豊臣秀長役に起用されるなど、今ノリにのっている俳優、仲野太賀。そんな彼が、旧芸名の「太賀」時代に出演した作品が、この『母さんがどんなに僕を嫌いでも』だ。
本作は、人気ブログ「ゲイです、ほぼ夫婦です」の管理人・歌川たいじの同名自伝を基にした映画。監督は『泣き虫ピエロの結婚式』(2016)の御法川修で、母の光子役を吉田羊が演じる。
一般的に、「毒親」「虐待」を描いた作品では、終始沈鬱なトーンが画面を支配するものだ。しかし、本作に限っては、悲壮感があまり感じられない。その理由は、主人公・タイジの母への無償の愛にある。無視されても殴られても、施設に預けられそうになっても、母を一途に想い続けるタイジ。そんな彼の愛は、最後の最後に大輪の花を咲かせることになる。
物語の終盤。多額の借金を抱えた光子は脳梗塞を起こして倒れてしまう。母を背負い、病院に運んだタイジだったが、光子はなおもタイジにつれない態度をとる。
「負けてたまるか、母さん。あんたと対決だ!」
そう決意したタイジは、とある方法で病室の光子にエールを送る。そして、一筋の涙を流した光子は、はじめてタイジに感謝の気持ちを伝えるのだ。
吉田羊と仲野太賀。2人の名演が記憶に残る、心温まる作品だ。