「検索してはいけない」映画のあまりにもあっけないラスト
『震える舌』(1980)

監督:野村芳太郎
脚本:井手雅人
原作:三木卓
出演:渡瀬恒彦、十朱幸代、若命真裕子、中野良子、宇野重吉
【作品内容】
千葉郊外のとある団地。三好昭(渡瀬恒彦)は、妻の邦江(十朱幸代)、娘の昌子(若命真裕子)と3人でマンションに住んでいた。マンションの周辺にはまだ葦の茂みがあり、昌子は毎日のように湿地の泥の中、虫取りアミを手に遊んでいた。
そんなある日。邦江は、昌子の異常に気づく。食事中、昌子がぽろぽろと食べ物をこぼしていたのだ。風邪を疑って心配する邦江。その直後、昌子は悲鳴をあげてばったりと倒れる。
【注目ポイント】
発症すれば致死率30%ー。かつて、そんな恐ろしい病気が日本に跋扈していた。破傷風だ。この病気は、土壌やほこり、動物のフンなどに存在する破傷風菌が傷口に入ることで感染。発症すると、全身のけいれんや痛みといった激烈な症状が起こるとされ、国立感染症研究所のHPによると、現在も全国で毎年100例程度が確認されている。本作は、そんな破傷風の恐怖を描いた作品だ。
原作は、1975年に発表された三木卓の同名小説で、監督は『八つ墓村』(1977)で知られる名匠、野村芳太郎。キャストには、渡瀬恒彦や十朱幸代、宇野重吉、北林谷栄ら、往年の名優たちが名を連ねる。
医療ドラマであるにも関わらず、ホラーよりも恐ろしい映画として、「検索してはいけない言葉」に登録されている本作。その理由は、ひとえに昌子を演じる若命の迫真の演技にある。
あまりにも激しいけいれんから、病院のベッドに拘束された昌子。そんな彼女が、思い切り身体をのけぞらせ口からドバっと血を噴き出すシーンは、トラウマになること必至だろう。
さて、そんな本作だが、ラストシーンはあまりにもあっさりしている。昌子が死の危機を脱し、順調に回復するからだ。
退院し、再びマンションに戻ってきた昌子と、彼女の寝顔を見て笑顔で床に就く昭と邦江。そのあまりにも唐突なラストに、観客は安堵を超えて拍子抜けしてしまうこと請け合いだろう。
(文・編集部)
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【了】