プロが選ぶ史上最も「殺陣がスゴい時代劇」は? 珠玉の日本映画5選。レジェンドが絶賛する究極のアクションとは?

text by Nui

『SHOGUN 将軍』(2024)を筆頭ににわかに活気付く時代劇。そこに欠かせないのは殺陣である。今回は『十一人の賊軍』(2024)で「殺陣が格好良すぎる」と話題を呼んだ爺っつぁん役・東映剣会の本山力と、その先輩でレジェンドの峰蘭太郎という殺陣のプロの協力のもと、昭和から令和まで殺陣が魅力的な時代劇映画をセレクトした。(文・Nui)

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【Nuiプロフィール】

絵描き・文筆家・時代劇リサーチャー。2021年より主に時代劇の美男子を描く作家として活動開始。現在、様々な俳優の取材を通して勉強中。主な仕事に『FINAL FANTASY XVI』広告絵画参加、FMラジオ&Podcast「時代劇が好きなのだ!」パーソナリティなど。

真田広之VS藤田まこと
日本映画史に残る大立ち回り

『必殺4 恨みはらします』(1987)

真田広之
真田広之【Getty images】

監督:深作欣二
脚本:野上龍雄、深作欣二、中原朗
出演者:藤田まこと、村上弘明、かとうかずこ、ひかる一平、三田村邦彦、真田広之、倍賞美津子、堤大二郎、相楽ハル子、岸田今日子、千葉真一

【作品内容】

 与力・安田小兵衛が町奉行・長尾監物に切りかかった。長尾は定町廻りの中村主水(裏で殺しを請け負う仕事人)を盾にするものの、主水が避けたせいで長尾は死んでしまう。後任の奉行に就いた奥田右京亮は、肌を白く塗った若い美男子だった。

 半年の御扶持半額をお取り上げになった主水がやけ酒を飲んでいるところ、外では旗本愚連隊が暴れ回っていた。ある夜、愚連隊の首領3人の殺しの依頼を受けた主水だが、やがて奥田右京亮の素性を探るようになる。

【注目ポイント】

 TV「必殺」シリーズ第28作『必殺仕事人V・風雲竜虎編』放送時期に公開された、4作目の劇場版。

 主水(藤田まこと)、政(村上弘明)、お玉(かとうかずこ)、順之助(ひかる一平)といったレギュラーの仕事人に加えて、シリーズ屈指の人気を誇る、秀(三田村邦彦)も登場する。

 真田広之が初の悪役に挑んだ作品で、ゲストの仕事人として千葉真一も登場。これまでの『必殺』シリーズとは毛色が異なり、派手派手しくアクション色の強い雰囲気になっている。とはいえ監督を務めた深作欣二は『必殺』シリーズ第一弾のドラマ『必殺仕掛人』を手がけており、ファン待望のカムバックである。

 現在では『SHOGUN 将軍』(2024)などで渋さと貫禄を見せる真田広之だが、27歳の若さと勢いが漲り、陰間上がりで狂気を漂わせる町奉行・奥田右京亮という特異な役柄を演じている。

 殺陣師は、菅原俊夫と楠本栄一。菅原といえば、数々の東映作品を担当し、最も長く関わったのはTVシリーズの『水戸黄門』。楠本は『必殺』お馴染みの殺陣師である。舞うような東映の魅せる殺陣師と、リアル路線できっちり殺しにいく松竹の殺陣師の仕事が融合しているのも面白い。

 真田・千葉のJACと深作の組み合わせゆえに終始アクションは愉しめるのだが、やはり一番の見どころは、ラストの真田広之VS藤田まことの一騎打ち。

 鬼のように長髪を振り乱し、飛び跳ね、薙刀で襲い掛かる真田広之と、必死の形相で立ち向かう藤田まことの闘いは、日本映画史に残る名立ち回りと言っていいだろう。最後にも驚きが待っており、真田の倒れる姿も必見だ。

 JACらしさが強いかといえばそうではなく、本山力によれば、真田の立ち回りは正統派に寄せた殺陣に見えるという。高貴から狂気へと変貌する若き日の真田広之の迫力を、ぜひ味わってほしい。本山が「強烈」と推薦する名作。

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