最も毒親の役が上手かった日本人女優は? トラウマ級の名演5選。観ていてシンドい…記憶に残る演技をセレクト

ここ10年で“毒親”という言葉はすっかり世間に定着した。毒親を描いた映画は多く、中には鮮烈な描写で観る者に嫌悪感を惹起するものも…。もちろんそうしたネガティブな反応は描写や芝居の力の賜物であり、同じような悲劇が現実で繰り返されないように啓発する意義を持つ。そこで今回は、毒親の役を演じて強烈なインパクトを放った女優を5人セレクト。芝居の魅力を解説する。(文・野原まりこ)

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自由奔放さがあまりにも怖い毒親

YOU『誰も知らない』(2004)

YOU
YOU【Getty Images】

監督:是枝裕和
脚本:是枝裕和
出演:柳楽優弥、北浦愛、木村飛影、清水萌々子、韓英恵、YOU

【作品内容】

 新しくアパートに越してきた母親のけい子(YOU)と息子の明(柳楽優弥)は、大家に父親が長期出張中だと嘘をつく。しかも、明の下にはそれぞれ父親の違う3人の妹弟がいた。明以外の子供たちは外へ出ることを禁じられ、存在を隠される。

 そんなある日、母親が彼らを置いて恋人のもとへ行ってしまう。

【注目ポイント】

 タレント、女優とマルチに活動するYOU。彼女の独特な発話のリズムと目を引く佇まいは、映画を味わい深くするスパイスとして作用する。そんな彼女が毒親を演じて話題を呼んだ作品が、主演の柳楽優弥が第57回カンヌ国際映画祭で最優秀主演男優賞を受賞した映画『誰も知らない』だ。

 冒頭、親子2人で新居に引っ越してくるシーン。YOU演じる母親のけい子は、息子・明を連れて大家に2人暮らしだと嘘をつく。しかし引越し業者が去った後、スーツケースの中から2人の無邪気な子どもが飛び出してくる。その場にいる全員が幸福な表情を見せるファーストシーンだが、物語は次第にシリアス度を強めていく。

 YOUが演じる母親のけい子は、子どもたちに暴力を振るうでもなく、彼女なりに子どもたちに愛情を注いでいる様子だ。

 しかし、ふわふわした雰囲気のまま「幸せになっていい?」と独りよがりな言葉を口にし、子どもたちを置いて出ていってしまう描写には、YOU本人が持つ型にハマらない雰囲気と舌足らずな喋り方も相まって、観る者に「こういう親、いそう」と思わせる、強烈なリアリティがある。

「私が幸せになっちゃいけないの?」と言われた長男の明(柳楽優弥)は、何も答えることができず、幼い妹と弟の面倒を見させられ、次第に生活は荒れていく…。

 まるで自分が子どものように無邪気に振る舞い、罪悪感もなく子どもたちを見放すYOU演じる母親の自由奔放さが、ただただ怖い。

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