歪んだ親子愛が生み出した衝撃の実話

長澤まさみ『MOTHER マザー』(2020)

長澤まさみ
長澤まさみ【Getty Images】

監督:大森立嗣
脚本:大森立嗣、港岳彦
出演:長澤まさみ、奥平大兼、夏帆、皆川猿時、仲野太賀、土村芳、荒巻全紀、大西信満、木野花、阿部サダヲ

【作品内容】

 シングルマザーの三隅秋子(長澤まさみ)は、ろくに仕事もせず、男を取っ替え引っ替えしていた。息子の周平(奥平大兼)はそんな秋子におとなしく従い続け、詐欺を働くようになる…。

【注目ポイント】

 “長澤まさみ×毒親”のインパクトで世間に大きな影響を与えた本作。これまで作品に合わせて清純さや妖艶さを巧みに使いこなし、数々の名作に貢献してきた長澤まさみだったが、本作で新境地を開拓。役者としての引き出しの多さを世間に知らしめた。

 長澤が演じた秋子は、シングルマザーとして息子の周平を育ててきたが、困ったことがあるとすぐに両親に金をせびり、自身を咎める声には聞く耳を持たない。息子の前で女であることを隠すことなく男にしなだれかかる姿は、痛々しいと言う他ない。

 2014年に起きた川口祖父母殺害事件のルポタージュ『誰もボクを見ていない なぜ17歳の少年は、祖父母を殺害したのか』(山寺香、ポプラ社)を原案としている本作において、堅実な両親のもとで育った秋子が周りを巻き込みながら堕ちていく様は、長澤まさみ本人がもつカラッとしたイメージと化学反応を起こし、映画に稀有なリアリティをもたらしている。

(文・野原まりこ)

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【了】

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