一人二役を見事にこなした圧倒的な演技力
神木隆之介『海に眠るダイヤモンド』(TBS系、2024)
かつては天才子役として名を馳せ、今に至るまでずっと最前線で活躍し続けている神木隆之介。普段は、知的で優しい雰囲気を身上とする神木だが、そんな彼もホスト役で鮮烈な印象を残した俳優のひとり。
2024年にTBSで放送されたドラマ『海に眠るダイヤモンド』で、神木がホストの役を演じると聞いて驚いた人は少なくないだろう。
『海に眠るダイヤモンド』は、昭和の高度経済成長期と現代を舞台に、愛と青春と友情を描いた家族の壮大な物語。主演を務めた神木は、歌舞伎町の売れないホスト・玲央と、1955年の長崎県・端島で暮らす青年・鉄平という、正反対のキャラクターを見事に演じ分け、改めて、演技力の高さを世間に知らしめた。
本作は、現役屈指の売れっ子脚本家・野木亜紀子がオリジナルストーリーをこしらえた肝煎りの企画とあり、放送前から大きな期待を寄せられていた。言うまでもなく、高まったハードルを超えるのは容易ではないが、ドラマが事前に想定されていた以上の成功を納めた背景に、神木の熱演があることは間違いないだろう。
そんな本作の現代パートでホストを演じた神木の芝居の魅力は、人間味の深さにある。身のこなしの部分でホストらしさを堅実に表現しつつ、神木の演技は「ホストとして生きる人間」を繊細に表現していた。
金にがめつく、異性に媚びる…といったステレオタイプではない、生々しいホスト像を誠実な芝居で体現してみせた神木の芝居はどうしようもなく魅力的だった。