事実よりも視聴率の取れる映像を…。
テレビ業界の欲望とモラルの欠如を描く
『ナイトクローラー』(2014)
監督:ダン・ギルロイ
キャスト:ジェイク・ジレンホール、レネ・ルッソ、リズ・アーメッド、ビル・パクストン
【作品内容】
窃盗などで生計を立てるルイスは、事故現場で報道専門のパパラッチと出会い映像を売る仕事を知る。その後、ビデオカメラを入手したルイスは警察無線を傍受し、事件や事故現場の映像を撮影していくが…。
【注目ポイント】
俳優のジェイク・ギレンホールが主人公ルーことルイス・ブルームを演じた本作。ジェイク・ギレンホールといえば、これまで『ドニー・ダーコ』(2001年)で精神が不安定な高校生を演じ、その後『ブロークバック・マウンテン』(2005年)で繊細な演技を披露。演技派俳優としての地位を確立した彼が、本作では10Kg以上も減量して挑んだのは、狂気と執念を抱えた男だ。
無職のルイスは盗みを働きながらその日暮らしをしていた。ある日、事故現場でカメラを構える男を見かけ、事件映像を売る仕事があることを知る。彼はすぐにビデオカメラを手に入れ、パパラッチとしての仕事を始める。
最初は事故現場に駆けつけ、遠巻きに撮影するだけだった彼だが、次第により刺激の強い映像を求めるようになり、やがて事故現場のケガ人を自ら動かし、やらせの映像を作り出すようになる。
ルーの行動は、テレビ局が求める“視聴率の取れる映像”を生み出し、高額で取引が行われる。そのため、過激な映像を求めるようになっていく彼の狂気は視聴率至上主義に染まったテレビ業界の欲望とモラルの欠如を呼応するように深まっていく。
報道が「事実を伝える」から「視聴率を稼ぐ」ものへと変質し、倫理よりもインパクトが優先される。その結果、視聴者の興味を引くためならば、映像の編集や誇張すら許容される世界が広がる。
この現実の延長線上にある危険性を鋭く指摘し、「真実とは何か?」「報道の倫理とは?」という問いを突きつける本作。我々が日々目にするニュースも、ルイスのような”ナイトクローラー”によって作られているものかもしれない。