読者のあなたも真実を見極められるか?

『ニュースの天才』(2003)

ヘイデン・クリステンセン
ヘイデン・クリステンセン【Getty images】

監督:ビリー・レイ
キャスト:ヘイデン・クリステンセン、ピーター・サースガード、クロエ・セヴィニー、スティーヴ・ザーン

【作品内容】

 ニューリパブリック誌で活躍している最年少記者のスティーブン(ヘイデンクリステンセン)は、ある日ハッカーに関する記事を執筆し、話題となる。しかし、インターネットマガジンの記者アダムは記事の内容に疑問を抱き調査する…。

【注目ポイント】

 200年に公開された映画『ニュースの天才』は、1990年代に実際に起きたジャーナリズムのスキャンダルを描いた作品。若手記者のスティーブン・グラスが、雑誌「The New Republic」で執筆した41本の記事のうち、実に27本が完全または部分的に捏造されていたことが発覚した事件だ。

 映画では、彼のキャリアを終わらせることとなったハッカーに関する記事「HackHeaven」の虚偽が暴かれるまでと、その後の様子を中心に描かれている。

 ちなみにスティーブンが執筆した「Hack Heaven」の内容は、イアンという天才少年ハッカーが大手ソフトウェア企業をハッキングしたにもかかわらず、その企業から高額の契約金と高待遇でオファーされたというストーリー。企業側がどのように彼を引き抜こうとしたかについても具体的に語られており、一見するとリアリティのある内容に仕上がっていたが、実は完全なフィクションだった。

 この記事を不審に思った他メディアの記者アダムは記事の内容を裏付けるため、登場する企業や関係者に取材を始めるが、のちに企業は実在せず、天才ハッカーの少年も架空の人物であることが判明する。

 その情報を得た「The New Republic」の編集長チャックはスティーブンに記事の裏付けを求めるが、グラスは次々と言い訳を重ね、さらに証拠を捏造しようと試みる。

 最終的には彼の虚偽が明らかになり、記事を全面的に検証した結果、大半が捏造であることが発覚する。もちろんスティーブンは解雇されたが、2003年には野心家の記者が記事を捏造する物語の本を出版したそうだ。

 現代ではSNSの普及により、情報が瞬時に拡散される時代となった。だからこそ、ジャーナリズムの信頼性はより一層重要になっている。スティーブンのような虚偽報道が二度と繰り返されないことを願うが、読者側も情報を見極める力を養うことが必要だと感じさせられる作品だ。

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