若かりし頃の天才俳優が体現するドラッグ中毒の怖さ

『バスケットボール・ダイアリーズ』(1995)

映画『バスケットボール・ダイアリーズ』レオナルド・ディカプリオ
映画『バスケットボール・ダイアリーズ』レオナルド・ディカプリオ【Getty Images】

監督:スコット・カルヴァート
キャスト:レオナルド・ディカプリオ、マーク・ウォールバーグ、ロレイン・ブラッコ

【作品内容】

 バスケットボールが好きな高校生のジム(レオナルド・ディカプリオ)は、放課後になると悪友らと煙草や万引きをする問題児でもあった。そんなある日、唯一の理解者で親友のボビーが亡くなってしまう。ジムは悲しみを紛らわすようにヘロインに手を出してしまう…。

【注目ポイント】

 バスケットボールの才能を持ちながらも薬物依存に陥る青年の過酷な青春を描いた作家ジム・キャロルの自伝的小説を原作に、レオナルド・ディカプリオが主人公・ジムを演じた作品だ。

 カトリック系の高校に通っていたジムは、バスケットボールで優れた才能を持っていたが不良たちと一緒にタバコを吸い、万引きをするなど、問題児であった。一方で、詩を書くのが好きな一面もあったが、才能を理解してくれていた親友のボビーが亡くなったのをきっかけにドラッグに手を出してしまう。やがてドラッグ使用が発覚し、ジムは退部を余儀なくされ、そのまま学校も退学する。

 ジムはもともと明るい少年だったが、薬物に溺れるにつれ自分自身を見失っていく。家を出たジムはドラッグを手に入れるために犯罪に手を染めていき、最終的には完全な孤独に追いやられてしまう。

 そんな彼に手を差し伸べたのがバスケを通じて知り合った黒人のレジー。かつてドラッグで地獄をみた彼は、ジムを救おうとドラッグが抜けるまで部屋に閉じ込める。禁断症状で苦しむジムは、顔面蒼白で涎を垂らし震えが止まらず、もがき苦しむ。そんな彼にレジーは心を鬼にして向き合うのだ。

 ドラッグが抜けたように見えたジムだったが、結局、ドラッグの魅力が忘れられず、体を売って手に入れたお金でドラッグを買うが、これが偽物だったため売人を殺してしまう。殺人まで犯してしまうほどジムを狂わせてしまう薬物の恐ろしさを痛感させられる。

 本作は、薬物依存の恐怖をこれ以上ないほど強烈に描いている。薬物が青少年の人生を台無しにする。これは決して映画の中だけの話ではない。薬物にはまり、徐々に荒廃していく姿をリアルに表現した若干21歳のレオナルド・ディカプリオの演技に圧倒されること請け合いの1本だ。

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