30年間で逆転した日本のドラマと韓流ドラマの関係
ちなみに日本において、資産家設定のドラマが放送されるのはここ数年のスタンダードでもある。なぜだろうと考えると、その向こうに見えてくるのは韓流ドラマの数々である。
例えば『君の声が聞こえる』、『SKYキャッスル ~上流階級の妻たち~』、『涙の女王』など、資産家登場は韓流ドラマにおける十八番。そしてかつての大映ドラマのように展開が早い。これは前述の5作にも共通している。この状況から察すると、作品人気を獲得するための韓流オマージュなのだろうと推測する。
ではなぜ同じような設定がワンクールに固まるのか。これは昨今の連続ドラマの制作本数の増加が関係している。動画配信サービスという買い手の普及によって、多くのドラマ制作が行われるようになった。これが面白く、作品によっては放送時よりも再生数を伸ばすこともある。この影響によって多くのドラマを各局が一斉に作っていれば、若干の内容のダブりがあるのも仕方がない。加えて韓流ドラマの調子が良いとなれば、参考にする。その結果がワンクール5本の資産家登場に繋がったのでは? というのが私の推論。
なんだか寂しいと思うのは私だけだろうか。
かつて韓国は80〜90年代のトレンディドラマブームを目指していたと聞く。影響作となったのは『東京ラブストーリー』(フジテレビ系・1991年)だ。1995年3月の東亜日報では「トレンディドラマは新世代感覚のラブストーリー」と名付けて異例の特集が組まれたそうだ。このフィーバーによって、トレンディドラマ特有のストーリー展開が早く、若者たちの流行を取り入れたドラマ『ジェラシー』『ラストジャンプ』『愛をあなたのもとへ』などが制作されたと聞く。日本のドラマがレジェンドだった時期もあるのに今はどうやら逆転してしまったようだ。
この状況を逆転させる作品は…? と思いを巡らせると、放送中の『最高のオバハン中島ハルコ ~マダム・イン・ちょこっとだけバンコク~』(東海テレビ、フジテレビ系)が浮かんだ。名古屋特有の派手な資産家を扱った作品は見ていると元気が出てくる。こういった日本らしさをもっとドラマに反映するのはどうだろうか? あれこれと小うるさいことを書き連ねてしまったが、日々楽しませてくれる連続ドラマはバラエティー豊かであってほしいと思う。
(文・小林久乃)
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