残された兄のやるせなさに涙する
『アイアンクロー』(2024)
監督:ショーン・ダーキン
キャスト:ザック・エフロン、ジェレミー・アレン・ホワイト
【作品内容】
1980年代初頭。元元AWA世界ヘビー級王者のフリッツ・フォン・エリックを父に持つケビン、デビッド、ケリー、マイクの4兄弟は、父の教えに従いプロレス界の頂点をめざしていた。しかし、三男のデビッドが日本でのプロレス興行中に急死したことがきっかけで、次々と悲劇に見舞われてしまう。
【注目ポイント】
本作は、プロレスファンにはおなじみのフリッツ・フォン・エリック一と4人の息子たちの物語を、唯一の存命者であるケビンの視点から描いている。
世間からささやかれる”呪われた一家”との噂。それは、三男のデビッドがプロレス興行中に腸の破裂で急死したことをきっかけにしている。
「兄弟たちと一緒にいたい。それだけが大切なんだ…」
次男のケビンは、世間の目に抗うように「兄弟の絆」を紡ごうとする。ケビンの決意には、「一家でプロレス界の頂点を目指す」という重い十字架を背負わせ、子供たちにプロレス以外の愛情を注がない父への反発心がそこはかとなく感じられる。
しかし、兄弟の絆を紡ごうとするケビンの思いは、虚しくも叶わない。四男のケリーは兄のようなレスラーになれないと思い悩み自殺してしまうのだ。
この映画で最も胸を打つシーンの一つが、ケビンが結婚式のパーティーで、妻のパム(リリー・ジェームズ)と3人の兄弟とで踊るシーンである。弟たちの死を知ったあとで見ると、束の間の幸福の儚さに、観ていて涙腺が緩む。
また、ケビンが庭で遊ぶ2人の息子たちを見て涙を流しながら語るシーンも印象的だ。
「パパには昔兄弟がいたのに。今は、もう誰もいない…」
弟たちへの愛情を求めて止まなかったケビンのやりきれない気持ちがストレートに吐露される、涙なしでは観られない名シーンである。
本作には、日本のプロレスファンにおなじみのブルーザー・ブロディやハーリー・レイス、テリー・ゴディやリック・フレアーらも登場。プロレスファンにも、たまらない作品となっている。