「20年に1人の逸材」の本領発揮

蓮佛美沙子『バニラな毎日』(NHK)

蓮佛美沙子
蓮佛美沙子【Getty Images】

 映画デビューの翌年には主演映画が公開され、大林宣彦監督に「20年に1人の逸材」と評された蓮佛美沙子。もはやいまさら彼女の演技について語るなんておこがましい気もするのだが、それでもついつい名前を挙げたくなってしまうほど『バニラな毎日』(NHK)の白井葵はいい。

 パティシエとしてお菓子作りだけに専念してきた白井はとにかく真面目。本格的なお菓子をつくろうとするあまり採算を度外視して周囲との軋轢が生じることも気にしない。しかし、そんな彼女のお店が経営難により閉店を余儀なくされてしまうところから物語ははじまる。

 膨らんだ借金を抱え、誰に頼ることもせず、昼夜を問わずアルバイトをこなしている白井の前に、料理家を名乗る佐渡谷が現れ、お店の調理場を料理教室として使わせてほしいと言い出す。最初は頑なだった白井も、お金に目がくらんだこともあって、徐々に佐渡谷のペースに巻き込まれていく。

 お菓子作りは天才的でも生きることには不器用で、頑固な白井。融通が利かない人だというのは少し会話すればすぐにわかるのに、それでも放っておけないのは奥のほうに愛嬌があるから。その愛嬌とは、白井が持つお菓子への並々ならぬ愛情に由来するものだ。

 扱いにくくはあるものの、1人にはしておけない白井を、蓮佛は抜群の匙加減で生き生きと体現している。関西弁が気になるなどの指摘も聞こえてくる本作だが目が離せないのは、蓮佛の魅力によるところも大きいだろう。

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