「結婚は3Dです。打算。妥協。惰性」
『最高の離婚』(フジテレビ系、2013)
キャスト:永山瑛太、尾野真千子、真木よう子、綾野剛、八千草薫、窪田正孝、市川実和子、松尾諭、ガッツ石松
【作品内容】
光生(永山瑛太)と結夏(尾野真千子)は喧嘩が絶えないものの別れずにいたが、ある出来事を機に結夏が離婚届を提出。しかし、なぜか元夫婦は同じ家で暮らすことに。一方、灯里(真木よう子)と諒(綾野剛)夫婦には衝撃の事実が発覚する。
【注目ポイント】
2013年にフジテレビ系で放送されたドラマ『最高の離婚』。登場人物たちのセリフには含蓄があり、ウィットに富んだ会話劇のクオリティは民放ドラマのレベルを超えている。特に本作では結婚生活の“あるある”を軽妙に描きつつ、離婚後の心情もリアルに映し出しており、観ていてグサリと心を刺すセリフも多い。
互いの幸せのために離婚する光男と結夏、一方で、光生の元カノである灯里は夫の諒が浮気をしても別れない。彼らを通して、坂元作品の特徴である「愛の形の多様性」が彩り豊かに映し出される。
「私が思う幸せはあなたが思う幸せじゃなかった」と離婚を決意した結夏に対し「自分好きになるより人好きになる方が簡単だし、人好きになれば自分も好きになれる」「最終的には旦那の葬式の喪主になれればいいんじゃないかな、妻って…。」と夫が浮気をしても離婚を選ばない灯里。両者の価値観の違いを表現するセリフは、冴に冴えまくっている。
しかしながら、このドラマの最大の魅力は女性陣ではなく、永山瑛太演じる主人公・光生のセリフだろう。神経質で理屈っぽく、細かいことを気にする彼は「結婚って、長い長い拷問ですよ」「結婚は3Dです、3D。打算。妥協。惰性。そんなもんです」と結夏との結婚生活を振り返るが「離婚したら自由になると思ったら大間違いですよ。結婚生活の泥沼はだいたい見える範囲ですけど、離婚生活の泥沼は底が見えません。どこまで深いか、わかりません」と離婚後も不満をもらすのだ。
結婚について考えたい人、夫婦のすれ違いに共感できる人、坂元作品が好きな人ならずとも、幅広い層の方にぜひともおすすめしたいドラマだ。