バカリズムの綿密なリサーチ力

『ホットスポット』第6話 ©日本テレビ
『ホットスポット』第6話 ©日本テレビ

『ブラッシュ・アップ・ライフ』は、33歳で交通事故に遭い亡くなってしまう主人公の近藤麻美(安藤サクラ)が、死後現れた謎の案内係(バカリズム)から「来世はオオアリクイ」と告げられ、来世で人間に生まれ変わるべく「徳を積む」ために人生をやり直す、いわゆる「タイムリープ」ものだ。

 前の人生で経験した知識は来世に持ち越されるのだが、ある意味で超人的な能力を手にした麻美が、その能力を決して露悪的なことに使わずに(例えば、予知能力を使って富を築くなど)、あくまで身の回りで起きることを良くするために生まれ変わりの力を使いながら、薬剤師、テレビプロデューサー、研究医など様々な職業を経験して、人生を少しずつ良いものにしようと努力する様子が非常に面白い。

 また、1989年生まれの麻美たちの人生をリアルタイムで追体験しながら、当時流行ったドラマや音楽などのカルチャーに触れることができるのも大きな魅力だった。筆者も麻美たちとほぼ同年代なので、他のドラマ以上に感情移入してノスタルジーを感じることができた。

 特に驚いたのは、最終回で流れたCHAGEandASKAの「YAHYAHYAH」だ。実はこの曲がリリースされたのは1993年。主題歌となったドラマ『振り返れば奴がいる』も同年で、89年生まれの麻美たちは当時4歳で「リアルタイム世代」とは言い難い。

 だが、麻美たちが小学生だった90年代は、毎日と言っていいほど、平日夕方にフジテレビの過去の名作ドラマが再放送されていたのだ。『振り返れば奴がいる』はもちろん、麻美たちの会話にあった『お金がない』(1994)などは、年に1回は放送されていた記憶がある。

 そんな細かすぎて同世代以外には伝わらないあるあるまで盛り込んだとするのなら、もはやバカリズムのリサーチ力はもはや「恐怖」でしかない。

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