ミステリアスな先生役で新たな新境地を拓いた

榮倉奈々『黒の女教師』(TBS系)

榮倉奈々【Getty Images】
榮倉奈々【Getty Images】

 2012年にTBSドラマで放送された『黒の女教師』で、ミステリアスな教師に扮したのが榮倉奈々だ。本作は、ハートフルなイメージのある従来の教師モノとは一線を画す異色の学園ドラマであり、榮倉もこれまでにない役柄で、演技力の高さを世間に知らしめた。

 榮倉が演じる高校教師・高倉夕子は、イジメなどの校内トラブルを「課外授業」で解決するプロフェッショナルであるが、トラブル解決の見返りに金銭や物品を求める、ブラックな高校教師である。口喧嘩に強く、理論武装ばっちりである上、喧嘩のシーンでは長身を活かした華麗なアクションを披露して、視聴者を魅了した。

 一般的な倫理からすると、生徒に見返りを求める高倉の「課外授業」はアウトという他ないだろう。しかし、世間に出ると、自分一人で対処できない問題に直面する機会も増えるだろうし、その際、他者に解決を委ねて、無償で済むということはないだろう。その点、高倉の「課外授業」は、生徒に社会の厳しさを先んじて知らしめる劇薬のような効能を持っている。

 榮倉の演技の魅力は、そのクールな佇まいと圧倒的な存在感にある。表情を大きく変えることなく、生徒や保護者に対して本質を突きつける言葉の数々には、綺麗ごと抜きの確かな重みがあった。本作に他の学園ドラマにはない独自の緊張感をもたらしたのは、榮倉の芝居の賜物だろう。

 榮倉奈々の持つ知的な雰囲気と確かな演技力が、ドラマ史に残るダークな教師を生み、『黒の女教師』をまさに異色の学園ドラマへと昇華させたのである。

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