民放ドラマで視聴者にトラウマを与えた俳優は? 伝説の名演5選。鳥肌がとまらない…後世に語り継がれる名演技をセレクト
ドラマ好きの間で「名作」と評される作品にはいくつか共通点がある。その一つは、一度観たら忘れられない、強烈なキャラクターの存在だ。今回は、視聴者にトラウマ級のインパクトを与えたキャラクターおよび俳優を5人セレクト。唯一無二の演技の魅力を解説する。(文・阿部早苗)
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【著者プロフィール:阿部早苗】
神奈川県横浜市出身、仙台在住。自身の幼少期を綴ったエッセイをきっかけにライターデビュー。東日本大震災時の企業活動記事、プレママ向けフリーペーパー、福祉関連記事、GYAO トレンドニュース、洋画専門サイト、地元グルメライターの経験を経て現在はWEB媒体のニュースライターを担当。好きな映画ジャンルは、洋画邦画問わず、社会派、サスペンス、実話映画が中心。
忘れられない意地悪な表情
風間俊介『3年B組金八先生』(1999)
1999年に放送された「3年B組金八先生」第5シリーズ。平成に放送された金八シリーズの中でも傑作とも評されている。KAT-TUN結成前の亀梨和也も出演しているが、ドラマの中心となったのは、他ならぬ風間俊介だ。
同シリーズでは、担任の中野先生(ラサール石井)に対する集団暴行事件が発生し、担任が救急車で運ばれるという衝撃的なシーンから始まる。さらに療養中の担任に対して「3年B組有志一同」の名で葬式用の造花を送り、自殺に追い込もうとするなど手口は悪質そのもの。首謀者の生徒・兼末健次郎を演じたのが風間だ。
健次郎は、大人の前では優等生を装いながら、裏ではクラスメイトの弱みを握り、意のままに操るといった二面性を持っていた。加えて、特定の先生の授業になると態度が一変する。鋭い目つきでクラスメイトに指示を出し、授業を妨害させる。まさに知能犯というべき、異色の問題児である。
療養を余儀なくされた中野先生の代わりに3年B組の担任を務めることになった金八だったが、あまりの悪質さに”教師と生徒”ではなく”人間と人間”として向き合うと宣言したほどだ。
悪魔のような表情で底知れない憎悪を露呈させる風間の演技に心をかき乱された視聴者は多いだろう。
終盤では、健次郎の複雑な家庭環境が明らかになる。世間体を気にする彼の母親は引きこもりの健次郎の兄を隠し続けていた。さらに、母親は健次郎を全く見ておらず、学校での悪事は、家族思いの彼が母親に振り回されていたことが原因だった。
健次郎の残忍な言動に恐怖を覚えた視聴者は少なくないだろう。一方で健次郎は、母親との関係や家庭環境に悩む平凡な少年でもあり、ただの悪役ではない。複雑な心情を持った一人の孤独な青年に血を通わせてみせた風間の卓越した演技力によって、兼末健次郎は、およそ30年以上に渡って続いた『金八』シリーズでも群を抜いて人間味のあるキャラクターの1人となった。
物語の終盤で金八の愛の深さに心を打たれた健次郎は、卒業後もシリーズにたびたび登場。頼りになるOBとして金八の支えとなった。