「悪のカリスマ」の哀しき顛末
『ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ』(2024)
監督:トッド・フィリップス
脚本:スコット・シルヴァー、トッド・フィリップス
キャスト:ホアキン・フェニックス、レディー・ガガ、ブレンダン・グリーソン、キャサリン・キーナー、ザジー・ビーツ
【注目ポイント】
全世界で大ヒットを記録し、ヴェネツィア国際映画祭やアカデミー賞で数々の賞を受賞した映画『ジョーカー』(2019)。ホアキン・フェニックス演じる主人公アーサー・ジョーカーの狂気が多くの映画ファンの心をつかんだのは記憶に新しい。
しかしそんな『ジョーカー』ファンたちに冷や水を浴びせる形になったのが、2024年公開の続編『ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ』だ。
タイトルの「フォリア・ドゥ(Folie à Deux)」はフランス語で「二人狂い」という意味。一人の妄想が拡散し、複数人で同じ妄想を共有する精神状態を指している。とはいえ、本作では、「二人狂い」が崩壊し、ジョーカーの「一人狂い」へと変容していく様子を描く。そんな本作は、アーサーとハーレイクインとの心の交流を描いた恋愛映画でもある。
前作の凶行により、アーカム州立病院に収容されたアーサーは、音楽療法を受ける中でハーレイ・“リー”・クインゼル(演じているのはなんと稀代の歌姫レディー・ガガ!)と邂逅。2人は看守の目を結んで逢瀬を重ね、次第に深く結ばれていく。
そんな中、アーサーの裁判も進行。2日目には弁護士を解雇し、アーサー自ら自身の弁護を担当する。しかし、自らの行動に責任を感じたアーサーが、裁判中に「ジョーカーはいない」と発言。徐々にリーの心は離れていってしまう。かつて、「悪のカリスマ」という仮面を被ることで、世間をあっと言わせたジョーカーは、自らその仮面を脱ぎ捨てたのだ。
そして、もはやジョーカーではなくなった彼には、相応の「報い」が待っていた。新しいジョーカーを名乗る若い受刑者から腹部を刺されるのだ。消えゆく意識の中で、リーとのステージを夢想するジョーカー。その顔からかつての「悪のカリスマ」の面影が消えていたのは言うまでもない。
(文・村松健太郎)
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【了】