ドラマ史上最も悲劇的で謎めいたラスト

『高校教師』(1993、TBS系)

真田広之
真田広之【Getty images】

脚本:野島伸司
キャスト:真田広之、桜井幸子、赤井英和、京本政樹、持田真樹、峰岸徹、中村栄美子、渡辺典子、黒田アーサー、小坂一也、若林志穂

【作品内容】

 羽村隆夫(真田広之)は、生物の非常勤講師として赴任した女子高で、生徒の二宮繭(桜井幸子)と邂逅。繭は、初授業を終えて帰宅する隆夫を尾行し、アパートまで上がり込んでしまう。

 翌日、隆夫は同僚の新庄徹と夜の繁華街を巡回し、初めて生徒を補導するが…。

【注目ポイント】

『家なき子』(1994、日本テレビ系)や『聖者の行進』(1998、TBS系)など、数々の問題作を世に送り出してきた脚本家・野島伸司。そんな野島が「ギリシャ神話のような作品を作りたい」という思いから製作した作品が、この『高校教師』だ。

 主人公の羽村隆夫を演じるのは、当時JAC(ジャパンアクションクラブ)出身のアクション俳優として活躍していた真田広之。ヒロインの繭役は桜井幸子で、他には赤井英和や京本政樹らが出演している。

 先生と生徒の恋愛に近親相姦、同性愛、自殺と、慎重に扱うべき社会問題を詰め込んだ本作。放送当時は、謎めいた登場人物の背景も相まって大きな話題を呼び、放映当時は平均視聴率21.9%、最高視聴率33.0%の高視聴率を記録した。

 本作を語る上で欠かせないのが、「永遠の眠りの中で」と題された謎めいた最終回だ。繭を溺愛する父・耕介は、繭と関係がある羽村から彫刻刀で刺され、自宅に放火。追われる身となった羽村は、繭とともに故郷の新潟へ帰ろうと約束する。

 しかし、待ち合わせの時間になっても繭は来ない。仕方なく一人上野発の特急あさまに乗り込んだ羽村。と、そこに、繭が登場する。そしてラスト、2人は、小指に赤い糸を結び付け、目をつむったまま身を寄り添わせるのだ。

 あまりにも謎めいたこのラストは放送当時大きな話題を呼び、TBS視聴者センターには2人の生死を問う連絡が殺到。しかし、現在では、車掌が2人を起こそうとしても起きなかったことなどから、「2人が列車内で心中した」という解釈が最も一般的になっている。

 なお、脚本家の野島伸司は映画用グッズのコメントで「二人の生死の決定はもはや作家の圏外で、視聴者が決めればいいと思っている」と語っている。本作のラストの解釈は、視聴者の数だけあるのかもしれない。

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