当代随一の喜劇作家が描いた悲劇的な結末
『振り返れば奴がいる』(1993、フジテレビ系)
脚本:三谷幸喜
キャスト:織田裕二、石黒賢、千堂あきほ、松下由樹、西村雅彦、佐藤B作、中村あずさ、鹿賀丈史
【作品内容】
天真楼病院の外科医・司馬江太郎(織田裕二)は、腕はたしかだが冷徹な性格の持ち主。
ある夜、手術を終えて外科部長室で麻雀をしていた彼のもとに、交通事故の患者が運ばれてくる。新任外科医の石川玄(石黒賢)に手術を依頼する司馬。しかし、時同じくしてがん患者の容態が急変、司馬は春美(松下由樹)から手術を頼まれる。
【注目ポイント】
『王様のレストラン』(1995、フジテレビ系)や大河ドラマ『鎌倉殿の13人』(2023、NHK総合)など、数々の名作を世に送り出してきた脚本家、三谷幸喜。そんな三谷の本格的な連続ドラマデビュー作が、この『振り返れば奴がいる』だ。
主演は、トレンディドラマ俳優として名を馳せていた織田裕二と石黒賢。キャストには他に千堂あきほや松下由樹、西村まさ彦らが名を連ねる。
世間的には「喜劇作家」のイメージが強い三谷だが、本作は医療ドラマの金字塔『白い巨塔』をイメージしたとだけあってシリアスそのもの。
最終回「最後の戦い」でも、司馬江太郎が執刀を担当した石川玄がスキルス胃がん由来の肺梗塞で死亡し、さらに司馬も贈収賄の罪を着せて病院から追放した主任医師、平賀友一に刺されるという悲劇的な結末になっている。
とはいえ、実はこの展開、三谷のアイディアではなく、「ラストで白黒はっきりつけて欲しい」という織田の要望によるもの。三谷得意のコメディパートも現場でどんどん書き換えられていたのだという。
なお、三谷は、本作から4年後、本作での経験をもとにした映画『ラヂオの時間』(1997)を制作。当時の忸怩たる思いを笑いに昇華している。