ノーベル賞作家が描く悲劇的な未来
『わたしを離さないで』(2016、TBS系)
脚本:森下佳子
キャスト:綾瀬はるか、三浦春馬、水川あさみ、真飛聖、伊藤歩、甲本雅裕、麻生祐未
【あらすじ】
山奥にある陽光学苑では、保科恭子(綾瀬はるか)が「介護人」として働いていた。この学校には、土井友彦(三浦春馬)をはじめ、子どもたちが特別な教育を受けていたが、彼らには過酷な運命が待ち受けていた…。
【注目ポイント】
1989年にイギリス最高の文学賞とされるブッカー賞を、2017年にノーベル文学賞を受賞した小説家カズオ・イシグロ。そんな彼の「最高傑作」を実写化したドラマが、この『わたしを離さないで』だ。
脚本は、大河ドラマ『おんな城主 直虎』(2017、NHK総合)や『JIN-仁-』(2009-2011、TBS系)で知られる森下佳子。主演は綾瀬はるかで、三浦春馬や水川あさみ、麻生祐未らがキャストに名を連ねる。
全寮制の学校、陽光学苑が舞台の本作は、一見すると普通の青春ドラマのように思える。しかし、物語が進むうちに、彼らが実は「臓器提供のために生まれた子どもたち」であることが判明。生徒たちの行く先に死が待ち構えていることが明らかになる。
そんな本作の最終回では、「提供者」である土井友彦(三浦春馬)の内面の葛藤が描かれる。かねてより「提供」の猶予を名乗り出ていた土井は、猶予の可能性が否定され、自身が大事にしていた宝箱やサッカーボールを捨てようとするのだ。
そんな中、土井と恭子は、保健体育教師の堀江龍子(伊藤歩)から、サッカーの試合の観覧に誘われる。堀江との再会を喜ぶ土井。と、龍子は、試合に参加している選手の1人が子どもの頃に「提供」を受けていたこと、そして、提供してくれた子どもの名前「ヒロキ」を命名されたことを2人に伝える。
「そこに感謝があることに、私は救われた…生まれてきてくれて、ありがとう。ありがとうございます」
自分の命が無駄ではない―。この事実を知った土井は、その後3度の「提供」で短い生を全うする。そして、主人公の恭子も、友彦との出会いを通して新たな人生の一歩を歩み出すのだ。
なお、本作には、人間とは何か、生命とは何かという根源的な問いに加え、過度に制度化された現代日本の社会システムについての痛烈な批判も含まれている。本作で描かれた「提供」が、日本の未来像にならないことを願うばかりだ。
(文:編集部)
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【了】