キャラクターの名言が刺さりまくる

『G線上のあなたと私』(2019、TBS系)

波瑠
波瑠【Getty Images】

脚本:安達奈緒子
演出:金子文紀、竹村謙太郎、福田亮介、坂上卓哉
キャスト:波瑠、中川大志、桜井ユキ、鈴木伸之、真魚、滝沢カレン、森岡龍、永野宗典、小西はる、矢崎由紗、小木博明(おぎやはぎ)、夏樹陽子、松下由樹

【作品情報】
 寿退職当日に婚約破棄された映子(波瑠)は、CDショップで聴いた「G線上のアリア」に惹かれ、大人のバイオリン教室に入る。そこで大学生の理人(中川大志)、主婦の幸恵(松下由樹)と出会い、交流を経て生きる価値を見出していく。

【注目ポイント】
 数多くのヒットドラマが誕生したTBSの火曜22時台。社会現象を巻き起こした『逃げるは恥だが役に立つ』(2016)や胸キュンシーンが話題となった『恋はつづくよどこまでも』(2020)も、同時間帯に放送されたドラマだ。

 そんな大ヒット作を生み出した枠でも、低視聴率に終わった隠れた名作が存在する。2019年に放送された『G線上のあなたと私』もその1つ。2017年に同枠で実写化され話題となった、『あなたのことはそれほど』のいくえみ綾による漫画が原作である。本作は、平均視聴率は7.65%にとどまったが、放送当時から「低視聴率なのはどうして?」という疑問の声がSNSで上がるなど、見応えのある作品であった。

 婚約破棄されたアラサー女子や兄の元婚約者に恋する大学生、小学生の娘を持つ主婦など、バックボーンを異にする3人の主要キャラがバイオリンを通して交流を重ねるうちに、やがて教室の外でも集まり友情を深めていく様が微笑ましい。

 各々の現実がリアルに描かれており、毎話、秀逸なセリフ表現が光った。なかでも波瑠が演じた也映子のセリフに刺さる女子が多かったようで、大学生の理人から「どうやって別れた男のことを忘れた?」と恋愛相談された時に「振られたからって前にも後ろにも進めませんよ!」と力強く言い切るシーンは印象的だった。

 他にも「誕生日は嫌いだ。自分を見てくれている人を数える日みたいで。嫌だ」など、年齢を重ねた人生のベテラン視聴者に訴求するセリフも多く、波瑠の嫌味のない誠実な芝居も相まって、観る者に勇気を与える作品になっていた。

 テレビ番組はドラマもバラエティも視聴率によって人気があるかないかを判断されがちだ。低視聴率であっても本作のように視聴者が共感できる演出やセリフによって、高く評価されているドラマも多く存在する。

(文・阿部早苗)

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【了】

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