地上波ギリギリの描写が凄い
『石の繭 殺人分析班』(2015、WOWOW)
脚本:渡辺謙作
キャスト:木村文乃、青木崇高、渡辺いっけい、平岳大、北見敏之、小柳友、古川雄輝、神野三鈴、段田安則、仲村トオル
【作品内容】
刑事だった父親の遺志を継ぎ、警視庁捜査一課十一係の刑事となった如月塔子(木村文乃)。ある日、廃ビルの地下室でモルタルで埋められた死体が見つかり、塔子ら十一係は捜査にあたることに。
やがて“トレミー”と名乗る犯人から電話が入り、殺人に関するヒントをかざしながら、捜査をひっかきまわしていく。そんななか、“トレミー”の予告通り、明るみになった第二の犠牲者。その犠牲者は、またもやモルタルで塗り固められていて…。
【注目ポイント】
麻見和史による警察小説『警視庁捜査一課十一係』(文庫版『警視庁殺人分析班』)を原作とした「殺人分析班」シリーズ(WOWOW)。本稿でレコメンドする「石の繭」ほか、「水晶の鼓動」「蝶の力学」が実写化。それに付随して、スピンオフ「悪の波動」やユニバース作品「邪神の天秤 公安分析班」が制作され、いずれもヒットを飛ばしている。
死体がモルタルで石膏像のごとく固められた怪事件を軸に、捜査一課の刑事たちが真相を究明していくストーリー。口にモルタルを注がれ生き埋めにされる様子や、皮膚をねずみに食われ赤い肉が露出しているシーンなど、本作の猟奇具合は想像以上。地上波ではおおよそ放映しがたい、においまで漂ってきそうな生々しい描写もあけすけに映像化しているのは、有料放送局ならではの攻めた試みといえるだろう。
だが、決してそこがピークではなく、どんどんギアを上げて面白くなっていくのが本作最大の特筆すべきところ。骨太な脚本に、作り込まれた演出。犯人との息切れを起こしそうなほどの攻防戦に、こちらが忘れていたものまで掬い上げてくれる抜け目のない伏線回収。加えて、一課の刑事たちが“筋読み”を交わしながら捜査を進めていくさまにも、こちらの考察欲と視聴熱がぐっと掻き立てられてしまうのだ。
主人公の塔子は刑事にしてはかなり頼りなく思えるが、「水晶の鼓動」「蝶の力学」とシリーズが進むにつれて、別人のようにたくましく活躍していく。彼女の成長譚としても、見ごたえのある傑作である。