レストランという「場」の力
『グランメゾン東京』(2019)
脚本:黒岩勉
キャスト:木村拓哉、鈴木京香、玉森裕太、寛一郎、朝倉あき、吉谷彩子、石丸幹二、大貫勇輔、尾上菊之助、冨永愛、中村アン、手塚とおる、及川光博、沢村一樹
【作品内容】
ミシュランで二つ星を獲得したシェフ・尾花夏樹(木村拓哉)は、ある重大事件を起こしたことで全てを失ってしまった。そんな折、料理人としての限界を感じ失意の底にいた女性シェフ・早見倫子(鈴木京香)との出会い、2人は世界最高のレストランを作り上げることを目標に「グランメゾン東京」を開店させ、三つ星を獲るために奮闘する。
【注目ポイント】
高視聴率が期待される木村拓哉主演のドラマ。中でも、過去に因縁を持つ天才シェフを演じた『グランメゾン東京』は、近年の代表作と言ってもいいだろう。初回放送の平均視聴率は12.4%と好スタートを切り、最終話では最高視聴率16.4%で幕を閉じた。ここ数年、20%を超えるドラマが出なくなって久しい中、この数字は十分誇るべきものだろう。
毎話「料理が美味しそう」なのはもちろん、視聴者を引き込んだのは、木村の演技もさることながら、塚原あゆ子の巧みな演出によるところが大きいだろう。塚原といえばドラマ『アンナチュラル』(2018、TBS系)、『最愛』(2021、同局)などを手掛けたヒットメーカーでもある。
料理をめぐる物語ではあるものの、何よりこのドラマは、厨房の人間関係を活き活きと描いていた。尾花とかつての仲間の衝突と和解、新たなメンバーが合流していく流れは、まるで一流レストランのコース料理を味わっているような気分にさせてくれた。また、ミシュラン二つ星にまで到達していた尾花が全てを失った「事件」の真相をめぐるミステリー要素もあり、視聴者の関心を引くための仕掛けは凝りに凝っていた。
加えて、レストラン「グランメゾン東京」に関わる、尾花以外の登場人物もみな個性豊かで素晴らしかった。パティシエ役の吉谷彩子、見習いシェフの寛一郎など、フレッシュなキャストに、沢村一樹、及川光博、鈴木京香が絡む構図は壮観の一言。個々のキャラクターはもちろん、「グランメゾン東京」という「場」のファンになった人も少なくないのではないか。
一流シェフの監修が入った料理シーンも視覚的に楽しめる。レストランを舞台に夢に向かって努力する”大人の青春劇”は視聴者の心をつかみ、2024年には劇場版が制作されるなど、長きにわたって愛されるコンテンツとなった。