涙なくしては観られない最終話

『空飛ぶ広報室』(2013)

新垣結衣
新垣結衣【Getty Images】

脚本:野木亜紀子
キャスト:新垣結衣、綾野剛、水野美紀、要潤、高橋努、ムロツヨシ、桐山漣、三倉茉奈、前野朋哉、桐谷健太、池内博之、生瀬勝久、柴田恭兵

【作品内容】

 2010年、東日本大震災前の航空自衛隊広報室を舞台に、航空自衛隊の広報室と関わることになるテレビ局のディレクター・稲葉リカ(新垣結衣)と航空幕僚監部広報官の空井大祐(綾野剛)が、挫折を乗り越え新たな目標に向かって奮闘する姿を描く。

【注目ポイント】

 新垣結衣と綾野剛がW主演を務めたドラマ『空飛ぶ広報室』。視聴率は初回から14.0%と上々で、最終話も15.3%と良好。放送から10年以上経った現在でも、「歴代日曜劇場でもっとも好きな作品」の1本に挙げる人も少なくない、2010年代屈指の良作である。
 
 脚本を担当したのが、後に同じTBS系で、名作『逃げるは恥だが役に立つ』(2016)『アンナチュラル』(2018)を世に送り出すことになる、野木亜紀子というのも大きいだろう。野木脚本の特徴といえば、主人公のみならず、脇役一人ひとりの内面にも焦点を当て、思わぬキャラクターの思わぬ活躍で予定調和を突き崩すスリルがある。例として『MIU404』(2020)最終話における、橋本じゅんのMVP級の活躍を例に挙げることができるだろう。加えて、現実社会の根深い問題を、劇中に導入する手腕も優れている。東日本大震災を扱った本作も例外ではない。

 自衛隊という特殊な職業を描いてはいるものの、職場のチームワークが徐々に良くなっていく過程が小気味よく描かれる展開には、老若男女の心に刺さる、普遍的な面白さがある。また、不慮の事故によって、ブルーインパルスになる、という夢を絶たれた空井(綾野剛)が葛藤を乗り越えていくドラマには、リカ(新垣結衣)の存在が大きく関係し、ふたりが成長していく姿は観るものに感動を与える。

 空自衛隊の全面協力を得て制作されており、実際の自衛官がエキストラとして出演していることから、細部に至るまでリアル。普段なかなか知ることのできない自衛隊の裏側を知ることができる、という点も得がたい美質だろう。

「人生の教科書みたいなドラマ」という声も聞かれる本作。未見の方はぜひご覧いただきたい。

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