『半沢直樹』を超えるダイナミズム
『下町ロケット』(2015、2018)
原作:池井戸潤
脚本:八津弘幸、稲葉一広、丑尾健太郎、槌谷健、神田優、吉田真侑子
キャスト:阿部寛、土屋太鳳、立川談春、安田顕、和田聰宏、今野浩喜、中本賢、谷田歩、竹内涼真、朝倉あき、ぼくもとさきこ、真矢ミキ、木下ほうか、池畑慎之介、恵俊彰、倍賞美津子、吉川晃司、杉良太郎
【作品内容】
元宇宙科学開発機構の研究員で現在は町工場の社長をしている佃航平(阿部寛)が、特許を巡る争いや技術革新に挑む姿を描いた作品。困難な状況を乗り越えながら仲間たちと共に大企業との対決を繰り広げる。技術者の誇りを描いた感動のストーリー。
【注目ポイント】
2015年に放送されたドラマ『下町ロケット』の初回放送は16.1%と好発進で、回を追うごとに勢いは増し続け、最終話では22.3%と高視聴率を記録。原作は『半沢直樹』と同じく池井戸潤であり、ドラマ版『半沢直樹』(2013)にハマったファンの期待値は高かった。蓋を開けてみると『半沢直樹』とは異なる面白さが評価され、現役のビジネスマンのみならず、老若男女から愛される作品になった。
宇宙科学開発機構の元研究員だった過去を持つ主人公・佃航平(阿部寛)は、かつての夢が忘れられず、ロケット部品の開発に熱を上げるが、ドラマ序盤は、従業員から反感を買ったりライバル企業から揶揄される機会も多かった。しかし、航平は持ち前の情熱で、従業員からの信頼を勝ち取り、ライバルたちが航平を見る目も好ましいものに変わっていく。つまり、このドラマでは佃製作所というチームが一体化していく過程と、日本初の国産宇宙ロケットの打ち上げに貢献するというプロジェクトの進捗が同時並行で描かれるのだ。こうしたダイナミズムは、『半沢直樹』にはない、本作ならではの魅力と言っていいだろう。
阿部寛演じる主人公・佃航平が仲間たちと共に逆境を乗り越え、大企業に立ち向かう姿は、下剋上の要素も濃厚でワクワクする。また、日本の製造業の現場や技術者の苦労を細かく描いた点も評価された。
企業間の駆け引きや逆転劇で観る者をスカッとさせつつ、中小企業の苦境といった社会的なテーマを扱うバランス感覚も流石の一言。美点を挙げれば枚挙にいとまがない、2010年代の日曜劇場最高傑作の1本と言っても過言ではないだろう。
(文・阿部早苗)
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