男女問わず目を引く色気の持ち主

二階堂ふみ

二階堂ふみ
二階堂ふみ【Getty Images】

 2009年公開の映画『ガマの油』でヒロインに抜擢され、スクリーンデビューを果たした当時、二階堂ふみの登場は衝撃的だった。男女問わず目を引く色気、一度聞いたら耳から離れない発話のリズムとトーン、そして観る者の心を射抜くようなまなざし。当初は、「ポスト宮﨑あおい」と評する声もあったが、ハイペースで映画やドラマに出演し、唯一無二のポジションを築いた。

 代表作となった『私の男』(2014)では主演を務め、複雑な心情を表現。演技力が高く評価され日本アカデミー賞最優秀主演女優賞を受賞し、その実力を世間に知らしめた。さらに2019年公開の『翔んで埼玉』では、ユニークな役柄を演じ、コメディセンスを発揮。映画を興行的な成功へと導いた。 

 これまでNHKでは朝ドラ『エール』(2020)のヒロインに加え、『平清盛』(2012)、『軍師官兵衛』 (2014)、『西郷どん』(2018)と3作の大河にも抜擢されている二階堂。『平清盛』では平徳子役、『軍師官兵衛』では淀(茶々)役、『西郷どん』では愛加那役と、それぞれで重要な役を演じているが、主演はまだない。

 そんな二階堂主演の大河ドラマ、筆者はぜひ「与謝野晶子」の生涯を描いてほしいと思う。明治期から昭和にかけて活躍した歌人であり、日露戦争に従軍した弟に向けて綴った「君死にたまふことなかれ」は、反戦への思いが込められた日本文学史に残る名作であり、世界情勢が不安的な現在、彼女の人生をドラマ化することの意義は計り知れない。

 一方で、晩年は右傾化し、戦争賛美の歌を作るなど、悪名高い人物でもある。反戦の女神と戦争賛美者。もし、与謝野の人生が描かれるのであれば、真っ二つに引き裂かれた2つのイメージを繋ぎ合わせるものになるだろう。

 時代の移り変わりによって1人の女性がどのような思想的な変遷を辿るのか。二階堂であれば、その一部始終をスリリングな演技で表現し、視聴者を引き込んでくれるに違いない。

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