現実はもっと悲劇的? 完成度の高い音楽映画

『ホイットニー・ヒューストン I WANNA DANCE WITH SOMEBODY』(2022)

ホイットニー・ヒューストン
ホイットニー・ヒューストン【Getty Images】

監督:ケイシー・レモンズ
出演:ナオミ:アッキー、スタンリー・トゥッチ、アシュトン・サンダース

【作品内容】

 母親も歌手であり、親戚にも有名アーティストがたくさんいるという環境で育ったホイットニー・エリザベス・ヒューストン(ナオミ・アッキー)。23歳の時に音楽プロデューサーのクライブ・デイビス(スタンリー・トゥッチ)に見出され、メジャーデビューを果たすと瞬くまににトップアーティストの座へと昇り詰める。しかし、私生活では同性愛ともいえる親友の存在や、家族からの過度な期待と金銭的搾取、その重圧から逃れるためのドラッグ中毒といった問題を抱え、その栄光のキャリアが少しずつ狂い出してしまう。

【注目ポイント】

 2012年に、ホテルのバズタブで溺死しているところを発見されたホイットニー・ヒューストン。「THE・VOICE」と呼ばれた圧倒的な歌声と天真爛漫なキャラクターで世界中から愛された彼女が、なぜ転落していってしまったのかを、史実に基づいて描いていく。

 見どころは、数々のヒット曲のPVやライブ、そしてスーパーボウルでの国歌斉唱などの名演を完コピしたシーンの数々。衣装やステージを忠実に再現し、ナオミ・アッキーの真実味のある演技と相まって、完成度の高い音楽を堪能できる。

 あまりウェットにならず、突き放したような視点も特徴的で、ホイットニーの天才ならではの強さとモロさを浮き彫りにして、誰からも愛されるような存在に描いていない。ダメ夫要素の強いボビー・ブラウンも、アシュトン・サンダースの演技力のおかげか、そこまでワルではない印象に。

 映画では描かれていないが、現実はもっと悲劇的で、娘のボビー・クリスティーナ・ブラウンは母の死から3年後に22歳で溺死。その交際相手など周辺人物も次々と亡くなるなど、ホイットニーとボビー周辺に不幸が続いている。

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