団地版『ミッドサマー』

『N号棟』(2022)

倉悠貴
倉悠貴【公式Instagramより】

監督:後藤庸介
キャスト:萩原みのり、山谷花純、倉悠貴、岡部たかし、諏訪太朗

【作品内容】

 心霊スポットとして有名な廃団地を訪れた大学生・史織は、啓太と真帆と共に謎の住人たちと遭遇。激しいラップ現象や自殺が続発する中、住人たちは彼らを巧みに誘い込む。啓太と真帆は洗脳され、追い詰められた史織は自殺者が運び込まれた建物に足を踏み入れるが…。

【注目ポイント】

 岐阜県で実際に起きた「幽霊団地事件」をモチーフに描いている本作。萩原みのりが主演を務め、考察型ホラー映画と銘打った作品でもある。

 大学生の男女3人は映像サークルの卒業制作に同行。向かった先は、幽霊団地と呼ばれ既に廃墟となっている集合団地だ。しかし、そこには住人がいた。

 史織(萩原みのり)、啓太(倉悠貴)、真帆(山谷花純)らは団地のリーダー的存在である中年女性(筒井真理子)から「霊を敬い共に暮らしている」「未知のものを排出する行為は愚か」と不気味な言葉を投げかけられた上、ラップ現象に見舞われ、パニック寸前に陥る。一方で、団地の住人たちは皆生気が感じられず、住人の1人が突然飛び降り自殺を図っても、何事もなかったかのように平然としている。

 最初は脅えていた啓太と真帆だったが、超常現象に見舞われるにつれて、次第に狂気に憑りつかれていく。本作が描くあまりにも異様な団地のコミュニティは、さながら新興宗教団体のようだ。

 アリ・アスター監督による世界的なブームを呼んだ傑作ホラー『ミッドサマー』(2019)では、異国の村の異様な儀式に直面する主人公たちを描いているが、本作には団地版『ミッドサマー』のような趣がある。住人たちが若者たちの心理を操り、次第に彼らを自分たちの世界に引き込んでいくサマはきわめて洗脳的である。

 オカルト(心霊現象)と疑似科学(マインドコントロール)が絡み合った不気味な雰囲気の本作。恐怖を生み出すものが、霊から精神的な支配に移行していく点も、たまらなく怖い。

(文・阿部早苗)

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【了】

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