2025年冬ドラマ、“最も衣装が素晴らしかった”ドラマは? 個性派スタイリストの仕事を深掘り解説

text by 小林久乃

作品の世界観として機能する衣装。近年、かつてのテレビドラマのような「作られたファッション」ではなく、日常に溶け込むリアルなスタイリングが視聴者の心を掴んでいる。今回は、2025年冬ドラマで印象に残ったスタイリングを紹介しながら作品の魅力に迫る。(文・小林久乃)

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【著者プロフィール:小林久乃】

出版社勤務後、独立。2019年「結婚してもしなくてもうるわしきかな人生」にて作家デビュー。最新刊は趣味であるドラマオタクの知識をフルに活かした「ベスト・オブ・平成ドラマ!」。現在はエッセイ、コラムの執筆、各メディア構成、編集、プロモーション業などを生業とする、正々堂々の独身。最新情報はこちら

『ホットスポット』の赤い制服にみるBabymixの圧倒的なセンス

市川実日子
市川実日子【Getty Images】

 冬ドラマを例に挙げると『ホットスポット』(日本テレビ系)はスタッフクレジットのスタイリングにBabymix(ベイビーミックス)さんの名前があった。

 あの『レイクホテル芦ノ湖』の赤い制服、何とも言えず垢抜けた感じがあったのは、俳優陣の見た目だけではなく、彼の力も大きかったのだと納得。そのほかの登場人物たちを見ていても、ドラマの舞台である山梨県の“地方感”を置いてけぼりにしない、好感度が残る。何よりもバカリズムが描く世界観によく似合っている。以前、同時間帯に放送されていた『ブラッシュアップライフ』(2023年)にもBabymixさんが参加していたというのも頷ける。

 彼といえば数々のファッション雑誌のスタイリストとして活躍しながら、いつの間にか日本の人気作品の衣装制作を手がけるようになっていた。参加している作品には『First Love 初恋』(Netflix)、『パリピ孔明』(フジテレビ系・2023年)など、このコラムを読んでくださっているみなさんの脳裏にも「あ〜!」と思い出す作品があるはず。派手、目立つという表現は似合わない、役が輝くためのアイテムを世に放っている。

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