結末がわかっていても夢中になって観てしまう

『アンナチュラル』 (2018、TBS系)

石原さとみ
石原さとみ【Getty Images】

脚本:野木亜紀子
キャスト:石原さとみ、井浦新、窪田正孝、市川実日子、池田鉄洋、竜星涼、小笠原海(超特急)、飯尾和樹(ずん)、吉田ウーロン太、北村有起哉、大倉孝二、薬師丸ひろ子、松重豊

【作品内容】

 死因究明を専門とする不自然死究明研究所「通称UDIラボ」が、不可解な死の真相を解明する物語。主人公・ミコト(石原さとみ)が科学的視点と人間ドラマを通じて死の背後に隠された複雑な事情に迫りつつ、ここで働く人々の人間ドラマも描いた法医学ミステリー。

【注目ポイント】

 ドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』(2016、TBS系)など人気ドラマを手がけてきた野木亜紀子が脚本を担当した『アンナチュラル』(TBS系)は、数ある“野木ドラマ”の中でも、名実ともに代表作の1本と言っても過言ではないだろう。主演は石原さとみが務め、井浦新、市川実日子、窪田正孝など脂の乗り切った役者たちの躍動感のある芝居も醍醐味だった。

 あらすじをざっと振り返っておこう。主人公である法医解剖医の三澄ミコト(石原さとみ)は、臨床検査技師の東海林夕子(市川実和子)や記録員の久部六郎(窪田正孝)、ベテラン法医解剖医の中堂系(井浦新)、所長の神倉保夫(松重豊)と共に、不自然死として運ばれてきた遺体と向き合いながら、真実を解明していく。基本的には1話完結のドラマではあるが、井浦新演じる中堂の8年前に亡くなった恋人の死の真相をめぐるドラマが縦軸にあり、視聴者をグイグイ引き込む。

 ドラマ終盤ではこの事件に焦点が当てられる。きっかけは雑居ビルの火災。ここで高瀬という男が助けられるが、他ならぬ彼こそが中堂の恋人を殺した真犯人であった。しかし、逮捕するにも証拠がない…。

 最終回では高瀬を殺人罪で立証するのが難航する中、証拠も処分され真相究明は暗礁に乗り上げたかに見えた。しかし、中堂の恋人はアメリカで土葬されており、再調査を行うことに成功。高瀬のDNAが遺体から発見され犯行が証明されるのだ。

 多くのドラマが犯人を割り出す過程に描写を割くのに対し、本作は早々に犯人を明らかにする。本作の醍醐味は、ミコトをはじめとしたUDIラボのメンバーたちが、犯行の主体でも、動機でもなく、あくまで証拠を裏付ける過程にある。点と点が線を結び、不可解に思われた事件の真相が浮き彫りになる瞬間には、得も言われぬ快感がある。

 再放送が決定するたびに「何回観ても神ドラマ」とSNSで盛り上がる本作。結末がわかっていても夢中になって観てしまうのは、UDIラボのメンバーたちによる丁々発止のやり取りもさることながら、事件が解決される「過程」を粘り強く丁寧に描いた脚本の力によるものだろう。

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