阿部寛のエールに勇気がもらえる

『ドラゴン桜』(2005、TBS系)

阿部寛
阿部寛【Getty Images】

脚本:秦建日子
キャスト:阿部寛、長谷川京子、山下智久、中尾明慶、小池徹平、新垣結衣、サエコ、野際陽子

【作品内容】

 偏差値32の龍山高校は入学希望者減少で倒産寸前。弁護士・桜木建二(阿部寛)は、倒産回避のため特別進学クラスを設立し、東大合格者5人を輩出する計画を立てる。教師の協力が得られず、桜木自ら指導に乗り出す。

【注目ポイント】

 2005年に放送されたドラマ『ドラゴン桜』(TBS系)は、漫画家・三田紀房の同名漫画を原作とし、落ちこぼれ高校生役には山下智久と長澤まさみを筆頭に、新垣結衣、小池徹平、中尾明慶、紗栄子が出演した他、長谷川京子など豪華キャストが名を連ねている。 

 同ドラマは、元暴走族の弁護士・桜木建二(阿部寛)が経営危機に瀕した龍山高校に赴任し、特別進学クラスを立ち上げ、落ちこぼれ高校生たちを東大合格に導くストーリー。桜木の厳しい指導のもと生徒らは東大を目指していくが、彼ら一人一人が抱える問題にも直面していく。

 矢島(山下智久)は母子家庭で借金を抱え、奥野(中尾明慶)は優秀な双子の弟と常に比較され肩身の狭い思いをしてきた。ドラマは人知れぬ悩みを抱えた生徒たちが桜木と出会い、勉学に励む過程で人間的に成長を遂げる過程をテキパキと描いていく。本作が爆発的な人気を博したのは、名もなき若者が数多の困難を乗り越えて夢を勝ち取る姿を追うオーディション番組を見るのと同種の喜びがあるからかもしれない。

 そんな本作の最終回が描くのは東大受験の結果発表。矢島は合格するが家庭のために入学を辞退する。一方で、矢島が東大受験をするからという安易な考えで受験した香坂(新垣結衣)は、彼が入学を辞退しても進学することを決意する。それぞれの決断が好ましいのは、自分の考えで主体的に未来を選びとっているからだ。それは東大に合格する以上に価値のあるものだろう。
 
 20.3%という高視聴率を記録した最終回の桜木のセリフはそんな本作のテーマを凝縮したものだ。

「入学試験の問題には正解はひとつしかない。辿りつけなければ不合格。人生は違う。人生には正解は、いくつもある。大学に進学するのも正解。行かないのも正解だ。スポーツに夢中になるのも、音楽に夢中になるのも友達ととことん遊びつくすのも誰かのためにあえて遠回りするのもすべて正解だ。だからよ、おまえら生きることに臆病になるな」

「すべて正解だ」。鬼のように厳しい桜木から発せられた、どんな存在をも全肯定するあまりも優しいセリフ。この言葉に勇気づけられたのは生徒だちだけではない。視聴者もそうだ。ドラマ内で紹介された学習法も話題となった本作を「人生のバイブル」と愛する人は多い。未見の方は初回から伝説の最終回に至るまで、じっくり鑑賞してみてほしい。
 

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